2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of techniques to improve accuracy of climate change detection by new surface temperature observation methods unaffected by solar radiation
Project/Area Number |
17K20051
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
山本 哲 気象庁気象研究所, 環境・応用気象研究部, 主任研究官 (60354502)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 地上気温観測 / 赤外線カメラ / 二酸化炭素 / 15μm吸収帯 / 超音波風速温度計 / 極細熱電対 |
Outline of Annual Research Achievements |
温度計による地上気温観測は膨大なデータの蓄積があり,気候変動検出において重要な役割を果たしているが、測定値は日射の影響を大きく受けており、それを完全に排除することも、その影響程度を絶対的に評価することもこれまで困難であり、気候変動検出に不確かさを生む要因となっている。このため、原理的に日射影響をまったく受けない地上気温観測手法として、大気の赤外放射の温度依存性を利用した、赤外線カメラによる地上気温観測手法を開発し、日射影響を高精度に評価して気候変動検出精度の向上を図ることが本研究の目的である。 非冷却型赤外線カメラと干渉フィルターの組み合わせにより、二酸化炭素の15μm吸収帯を観測波長とする赤外線カメラを製作した。野外観測が行えるよう防水防塵仕様とした。ポリエチレン製袋に入れた試験用二酸化炭素の測定などにより、カメラが二酸化炭素の射出する赤外線に十分な感度があることを確認した。 カメラを平板黒体や屋外大気の試験的観測を行ったところ、値に数℃以上の誤差が生じていた。二酸化炭素の射出する赤外線のみを捉えるため放射強度が小さくなっており、センサーの温度変化による観測値への影響が増幅されることから、メーカーの通常の校正方法では基準となる地上気温観測に必要な精度を確保することは、現状の構造では困難であると判断した。このため当初計画していた2台目のカメラの製作を中断し、改善対策を検討した。カメラ全体の温度を一定に保つ構造に改修することとし、仕様を決定した。これにより30年度早々に改修を行う。 日射影響を受けない基準となる気温観測を行う機器候補の野外相互比較観測の準備を進めた。候補のひとつである超音波風速計について、恒温恒湿槽で気温・湿度に対する校正を行い、十分な精度の気温観測値が得られるよう準備したものを調達した。別の候補である極細熱電対について製作などの準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
カメラの観測精度を確保するため改善対策を検討し、仕様を決定するのに時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
改修した赤外線カメラによりカメラを一定温度に保ち、平板黒体により校正を行う。また赤外線強度の方向別分布を測定して地上気温測定精度の向上を図るため、新たに広角のカメラを製作する。 校正後のカメラ・広角カメラと超音波風速温度計、極細熱電対、マイクロ波放射計、現業観測用通風筒などとの野外比較観測を実施する。観測値の特性を地上風速や日射などにより評価し、基準気温観測としての可能性を検討する。 野外比較観測の結果をもとに、現業観測用通風筒の気温観測特性を評価し、気候監視への影響を評価して、気候変動検出精度向上技術の改善方策をまとめる。 赤外線カメラでの気温観測性能が確認できた場合は、これまで提案されていない地上気温観測方式と考えられることから、特許出願を検討する。 カメラのさらなる活用方法として、火山周辺で窒息事故を引き起こす二酸化炭素の監視への活用を検討する。また15μm吸収帯の射出する赤外線を可視化出来るカメラは世界的にも珍しく、二酸化炭素の温室効果を演示するための格好の教材を提供しうることから、これを利用したアウトリーチ活動も検討する。
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Causes of Carryover |
カメラの観測精度を確保するため当初計画していた2台目のカメラの製作を中断したため支出額が計画より減少し次年度使用額が生じた。29年度に改善対策を検討し改修仕様を決定したので次年度使用額により30年度カメラの改修を実施する。
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