2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K20053
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
荒木 良子 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 放射線障害治療研究部, チームリーダー(定常) (40392211)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | DNA損傷 / 変異 / 全ゲノムシーケンシング / iPS細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線被ばくによるゲノム変異の理解は、放射線生物学の中心課題の一つである。これまで、変異頻度と質の測定は、特定のマーカー遺伝子を利用し、細胞生死のトリックを使う等の洗練された手法が用いられてきたが、その感度及び網羅性には限界があり、全ゲノムシーケンシング(WGS)技術の利用が期待されている。しかしながら、癌のようにクローン増殖した細胞集団の解析とは異なり、個々の細胞が異なる変異を有する場合、その同定は容易ではない。単一細胞からWGSを行うことが理想的であると考えられているものの、単一細胞から得たゲノムDNAを、シーケンシング必要量まで正確かつ均一に増幅する技術は確立していない。 今回我々は、単一細胞ゲノムの増幅ではなく、iPS細胞技術を用いて細胞毎クローン増殖させ、X線の影響が検出可能か否か検証した。iPS細胞化自身で変異が発生することは我々が報告している問題点であるが、その量、質の傾向には特徴があり、X線による変異と区別できる可能性があると考えた。 マウス線維芽細胞に山中4因子をレトロウイルスで感染させることにより、iPS細胞を樹立し、WGS解析を行い、点突然変異を同定した。当初X線を照射した線維芽細胞をスタート材料に用いる予定であったが、その場合、放射線影響の無い健全な細胞がエンリッチされてiPS細胞化する懸念があったため、今回は、あえてiPS細胞化の極初期に3Gy、5Gyの照射を行った。非照射群、3Gy照射群、5Gy照射群からiPS細胞を樹立し、WGS解析により点突然変異を同定した。その結果、5Gy群で明らかに変異の頻度上昇が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度途中で当初の計画を見直し、より良いプロトコールに改良した。その後、計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
樹立したiPS細胞株において点突然変異の頻度のみならず、質的変化を詳細に解析する。
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Causes of Carryover |
実験計画を変更し、4月以降に試薬を購入、実験することとした。年度内に購入すると試薬の劣化のおそれがあるため、次年度に繰り越しを行った。
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