2017 Fiscal Year Research-status Report
見えないものを見える化して保全する-環境DNAを用いた水草稀少種の生育状況の解明
Project/Area Number |
17K20056
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
牧 雅之 東北大学, 学術資源研究公開センター, 教授 (60263985)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 伸二 人間環境大学, 人間環境学部, 助教授 (40228945)
森長 真一 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (80568262)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 生物資源保全 |
Outline of Annual Research Achievements |
2011年の東日本大震災では,きわめて広範囲の沿岸部に大津波が押し寄せ,引き波による地表部の撹乱が生じた.その結果,津波浸水域では,新たに大小さまざまな水たまりができただけでなく,震災前から存在していた湖沼も大きな撹乱を受けて,生育する水生植物相が大きく変化した.津波浸水後の植物相調査によると,新たに生じた水たまりや撹乱を強く受けた湖沼群には,震災前に見られなかったさまざまな植物種の集団が新たに成立したことが分かっている.これは,津波による撹乱によって,埋土種子(堆積土壌中に維持されている,過去に生育していた植物の種子)が土壌から放出されて,新たに集団を成立させたためであると考えられる. これまでの調査は岸から簡単にアプローチできる場所のみを対象にせざるを得ず,沈水植物については,偶発的な漂流物を取得することによってのみ現存植物の生育を確認することができたに過ぎない.しかし,岸から簡単にアプローチできない湖沼底には,さらに多くの種が存在しているものと推測される.しかし,それを明らかにするためには,ボートなどによって水深の大きい地点まで移動し,そこから調査を行うより方法はない.この方法では多数の地点を調査するのは困難である. 本研究では,近年,発展の著しい環境DNAの解析手法を用いることによって,水中に生育する稀少植物のモニタリング調査に利用することを目的としている. 本年度は,東北地方の津波浸水域の撹乱を受けたと考えられる湖沼群に頻度高く見られる,沈水性のトリゲモ類についてリファレンスシーケンスを得ることを目的として,東北地方内でトリゲモ類を採取・同定しただけでなく,他地域でも同様の作業を行い,DNAオートシーケンサーによる塩基配列の決定を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定では,環境DNAの検出条件を検討することまで行うとしていたが,この点は不十分であった.また,トリゲモ以外の種についても,リファレンスのためのデータを採る予定であったが,課題採択からサンプリングシーズンまでの時間が短く,予定通り進まなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
環境DNAの検出条件を詳細に検討するため,条件の異なる水域から採水を行ったうえで,繰り返し実験を行うほか,フィルタリングに関する工夫も行う必要があるとかが得られる.さらに,サンプリングに関する情報の収集を行って,リファレンスについても計画の遅れを取り戻すようにする.
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Causes of Carryover |
条件設定に手間取っているために,予定していた解析のかなりの部分を翌年に持ち越すことになったためであって,次年度には条件を設定を綿密に行って遅れを取り返す予定である.
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