2019 Fiscal Year Research-status Report
見えないものを見える化して保全する-環境DNAを用いた水草稀少種の生育状況の解明
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17K20056
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
牧 雅之 東北大学, 学術資源研究公開センター, 教授 (60263985)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 伸二 人間環境大学, 人間環境学部, 准教授 (40228945)
森長 真一 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (80568262)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 在来種保全 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本は淡水性の水生植物の多様性が高いが,相当の割合が沈水性であって,陸から目でその存在を確認することはできない.沈水植物には絶滅危惧種とされている種が多数含まれているが,従来の調査法では,偶発的な発見に頼るか大きな労力を払うかしなければ,沈水植物の調査を行うことは困難であった.本研究では,湖沼において,沈水植物の種判別と現存量の推定を,採水サンプルに含まれる環境DNA解析とDNAバーコーディングによって行う手法を確立し,稀少沈水植物の生育状況を解明することを目的とする.そのために,まず日本産の沈水植物の葉緑体DNAの配列を決定し,網羅的なデータベースを構築することでDNAバーコーディング環境を確立する.その後,沈水植物の存在が既知である湖沼において,環境DNA解析の実験条件設定を検討する.この手法を確立した後,沈水植物相が未解明な湖沼(東日本大震災で津波の影響を受けた地点)に実際に応用する.また,その結果から,絶滅危惧にある稀少沈水植物の特性を明らかにし,保全に関する一般的な方策を考案する.本課題は,技術が開発されてからまだ10年に満たない環境DNA手法を,保全生物学に応用する試みである. 2019年度は,水生植物のDNAを増幅し,それ以外の生物のDNAを増幅させないようなPCRプライマーセットの設計を試行錯誤して行った.その結果,藻類などの増幅をある程度抑えることに成功した.また,そのプライマーセットを用いて,湖沼からの採水から環境DNAを増幅し,次世代シーケンサーによる配列決定を行った.バイオマスの多い水生植物の配列が得られたほか,陸生植物の配列も多数得られた.採水方法やDNA抽出方法を改善する必要があることが示唆された.同時に,レファレンスとして,当該のプライマーセットで増幅できる領域の配列を日本産の水生植物について広く決定した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度が実施最終年度の予定であったが,採水地の環境状況の変化により,もう1年度の期間延長を必要とした.
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Strategy for Future Research Activity |
採水の時期ならびにDNA抽出法をさらに検討することによって,結果の改善を図る必要がある.また,日本産の水生植物に関してのレファレンス構築をさらに進めたい.
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Causes of Carryover |
天候状況のために調査の一部が実施できなかったため,次年度使用が必要となった.そのために,予定していたとりまとめの打ち合わせ旅費も繰り越しせざるを得なかった.2020年度の使用は,前年に予定していた計画を遂行するために使用する.
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