2017 Fiscal Year Research-status Report
天然アミノ酸を用いた低環境負荷型イオン回収ペプチドの開発
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17K20066
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
野瀬 健 九州大学, 基幹教育院, 教授 (10301334)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 環境 / 生体分子 / 環境保全 / ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
原発汚染水問題においては、膨大なトリチウム水の量と合わせ、発電所内の滞留水、近隣の湖、沼などにおける放射性同位元素の蓄積が大きな環境問題として報道された。これらに対応するため、取扱が簡便で、環境中に散布しても生物毒性等の二次汚染が生じない汚染物質回収用の素材が、環境保護の観点から必要とされている。そのような生体分子由来の素材原料として、天然アミノ酸の重合体であるタンパク質は高い安全性から有力な候補である。しかし、タンパク質は一般に大量調製が困難でしかも高価であり、これまで大量使用には不向きであった。そこで、本研究では、安価に調製可能で、かつ、高い機能性を有するペプチド、すなわち、生体を構成する天然アミノ酸、特に、化学合成時にアミノ酸側鎖の保護が不要な脂肪族側鎖を有するアミノ酸のみを原料として、コスト的に大きな強みを持つ、新規な環境汚染対応可能な素材となる機能性ペプチドの調製を目指し、研究を行なっている。 本年度は、温度応答性ペプチドの化学合成、金属結合性の付与、環状化による機能性の向上の3点についての検討を実施した。ユニット合成を目指し、NCA法によるアミノ酸縮合法について検討を行ったところ、特定のペプチド配列間で縮合が可能であることが明らかとなり、フラグメント縮合法によるペプチド調製のめどが立った。また、金属を特異的に相互作用する官能基、例えば、NTAを導入したペプチドでは金属を吸着可能であることが明らかとなった。一方で、環状化により低濃度で温度応答性が発揮されることが判明し、より少ないペプチドで機能性ペプチドとしての特性を利用を可能とする発見がなされた。次年度において、これらをさらに発展させ、より実効性の高いペプチドの調製法と利用方法を確立する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究においては、アミノ酸、保護アミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、ペンタペプチドを原料とし、複数のカップリング方法を用いてのペプチド調製方法について検討を行い、既存の手法を用いる場合は十分に、また、目的物の大量調製のための新手法を用いた場合にもその合成手段の完成の目処が立つなど、一定の成果をあげた。また、金属結合性を確認し、ペプチドに有用な機能性を見出すなど、本研究を進展させるために非常に有益ないくつかの発見があった。さらに、これらについての論文発表、学会発表を行った。以上のことから、本研究は概ね順調に進展していると判断された。
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Strategy for Future Research Activity |
合成ペプチドの環境中での安定性を検討する上で、温度の影響、pHの影響、塩の影響、微生物の影響など、考慮すべき因子が多い。このため、適正な温度管理が可能なインキュベーター、pHメーター、金属イオンを同定可能な質量分析装置、さらに、細胞培養実験系などを適切に準備し、迅速に課題に取り組む準備を行っている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、実験の進め方において毒性試験を行う上で培養細胞の有効利用のため実験の順序を入れ替え、試薬等の使用を経済的にするとともに、測定試薬キットの購入時期を次年度に移行したためこの金額が生じた。すでに、平成30年度に試薬キットの購入を進めるようにしており、この金額は適正に研究活動に使用される。
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