2018 Fiscal Year Research-status Report
幸福余命指標を用いた帰還と被ばくのトレードオフ評価
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17K20069
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
村上 道夫 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (50509932)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹林 由武 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (00747537)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | リスク評価 / 主観的幸福度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、個人や社会の意思決定の支援を目的に、余命と幸福度の両観点から評価するための方法論を提案するものであり、その適用例として、福島における故郷への帰還と被ばくとのトレードオフの評価を実施するものである。 2018年度は、まず、2017年度に実施したアンケートの結果の解析を行った。主観的幸福度の強い要因である心理的苦痛について、解析したところ、現在でも避難している方と比べて、帰還した方のスクリーニング水準を越えた心理的苦痛を抱える人の割合は低かったが、全国値と比較すると高かった。さらに、幸福度の尺度を情動的・認識的・心理的幸福度に分類して、帰還等の要因との関連を評価した。その結果、帰還するかどうかについて決められない方よりも帰還した方の方が情動的・認識的・心理的幸福度のいずれの幸福度も高いことが明らかとなり、避難指示解除に関する展望をできるだけ早く提示するといった対策の重要性が示唆された。このほかに、心理的苦痛等の項目が幸福度と関連することが明らかになった。 さらに、2017年度に実施したアンケートの追跡調査も行った。2017年度に実施したアンケート調査の回答者826人のうち、アンケートの辞退や否定的な回答を記載した方などを除いた811名を対象として調査を実施した。これにより、2017年度のアンケート調査で得られた結果の妥当性を縦断調査の観点から確認できた。 以上をもとに、共変量を調整した上で、帰還について決められない、あるいは将来帰還したいという状態から帰還することによる幸福度の向上を算出した。さらに、幸福余命指標を用いて帰還による幸福度向上と被ばくによる影響のトレードオフ解析を行った。帰還による幸福度向上は被ばくによる影響よりも大きいことが明らかになった。得られた結果はアンケートに回答した方にフィードバックするとともに、解析した結果の一部は国際誌等で発表済みであり、メディア等でも報道された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の予定通り順調に進めることができた。予定通り、2017年度に実施したアンケート調査の詳細な解析を行うことに加え、追跡調査も行うことができた。得られた結果はこれまで、国際誌1報、国内紙1報に掲載済みの他、投稿中の論文がある。このように結果は順調であるが、さらに今後も論文投稿や学会発表を進めることで、当該事業をさらに精緻に、効果的に達成する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度には、2017年度、2018年度に得られたアンケート調査とその解析結果に基づいて、一部、必要に応じて詳細な解析の追加も実施しながら、国際誌への論文投稿や発表を積極的に進める。論文が掲載された暁には、自治体関係者へ周知するとともに、メディア等を通じた成果の伝達を行う。これまでの成果について関心の持ったメディアからの連絡を受けていることから、社会への成果の還元にも注力する。
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Causes of Carryover |
当初予定していたアンケート調査も順調に行うことができ、また、解析も進めることができた。当該事業をさらに精緻に、効果的に達成するために、国際誌への論文投稿や発表を行うために、1年間の延長を行いたい。期間延長については申請済みである。
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Research Products
(4 results)