2018 Fiscal Year Research-status Report
有機溶媒中で営まれる生命活動の総合的理解と環境調和型技術への応用
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17K20072
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
岩淵 範之 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (90328708)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | Rhodococcus属細菌 / 有機溶媒耐性 / 溶存酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、微生物における有機溶媒耐性の知見を整理し、有機溶媒中で営まれる生命活動を包括的に理解することを目標にしている。昨年度の研究では、有機溶媒相の内部で生育するRhodococcus属細菌において、微生物の生育がそう変わらずに細胞の局在性だけが変化する培養条件を探索した。その結果、NB培地にn-ドデカン(C12)を添加した条件、および、MB培地に終濃度1%でグルコースを添加した条件にC12を加えた条件において、生育がほぼ変わらずに局在性の違う条件を設定できた。 本年度の研究では、見出された各種培養条件において、細胞が有機溶媒相に存在する際に、有機溶媒中の溶存酸素を利用し、増殖するか否かを検討するため、各培二相養条件での有機相の溶存酸素濃度を検討した。 まず、IB2培地にn-ヘキサデカン(C16)を1:1.5の割合で添加した二相培養系を用いて、そこにR. erythropolis PR4株を摂取し、培養した後、C16相を抽出し、非接触式酸素濃度計OXY-1 SMA (Presens) を用いてC16相中の溶存酸素濃度を測定した。その結果、PR4株の細胞がC16相中に存在する場合、溶存酸素濃度は、空気中の酸素濃度を100%とした時の相対濃度で表した場合、約27.3%まで減少した。一方で、PR4株を接種しなかった場合の溶存酸素濃度は、99.8%と空気中と同等であったことから、PR4株の存在により、C16相中の溶存酸素が減少することが示された。他方、本条件でPR4株は良好な生育を示すことから、PR4株が同相の溶存酸素を利用して生育していることが示唆された。さらに、後続の実験により、本現象は、供試した限り、アルカンや株の種類を問わずおこることから、Rhodococcus属細菌にとって一般的な性質と考えられた
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、非常に難しいと思われていた有機溶媒中の溶存酸素濃度の測定の実験系の確立が、比較的序盤の段階で出来た。その結果、その後は各種培養系の有機溶媒中の溶存酸素濃度を測定する実験に重点を置いた体制を組んだ。それ故、結果として、本現象がRhodococcus属に一般的であることが見出された。
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Strategy for Future Research Activity |
Rhodococcus属の多くが、有機溶媒中に存在し、そこの溶存酸素を利用し生育していることが示されたことから、この時に発現している遺伝子群を特定するため、次年度はトランスクリプトームやプロテオーム解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初、非常に難しいと思われていた有機溶媒中の溶存酸素濃度の測定の実験系の確立が、比較的序盤の段階で出来た。その結果、その後は各種培養系の有機溶媒中の溶存酸素濃度を測定する実験に重点を置いた体制を組んだことから、未使用額が生じた。助成金の繰り越し分は、今年度から着したトランスクリプトーム解析を来年度本格的に行うこととなっており、その遂行に次年度助成金と合わせて使用する予定である。
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Research Products
(4 results)