2019 Fiscal Year Research-status Report
Comprehensive understanding of life activities in organic solvents and application to green sustainable technologies
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17K20072
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
岩淵 範之 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (90328708)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 有機溶媒耐性 / Rhodococcus / 非水系代謝 / 溶存酸素 / 耐熱性 |
Outline of Annual Research Achievements |
石油代替のエネルギー創成技術や省エネルギー化技術の開発は、将来の循環型社会形成のために、早急に解決されるべき世界的に重要な課題のひとつである。Rhodococcus属細菌は、有機溶媒に対する耐性および分解や変換、資化を含む代謝能を有することから、上述した技術への応用がなされている。同属細菌が難揮発性有機溶媒に優れた耐性を有し、かつ、細胞がアルカン相に転移して生育できることを見出し、またその後の研究により、同属細菌の約7割が有機溶媒中で生育できることを明らかにした。一般的には、有機溶媒中の生命活動は極めて特殊な性質と考えられる一方で、上述した結果は、Rhodococcus 属細菌においては普遍的な現象であることを意味している。故に本研究では、有機溶媒中で行われる生命活動を包括的に理解するための第一弾として、溶存酸素の利用について、以下の観点からアプローチを行った。 1、有機溶媒中の溶存酸素の利用 これまで、同属細菌が有機溶媒中の溶存酸素を利用し、生育していることは予測できたものの、対応できる機器が少なく、実験的に証明することは出来なかった。そこで本研究では、非接触式酸素濃度計OXY-1 SMA (Presens) を用いて溶存酸素濃度の測定を試みた。その結果、供試した限り、Rhodococcus 属細菌は、完全培地を用いた二相培養条件下で、生きている細胞がアルカン相に存在する時、そのアルカンの種類に関わらず溶存酸素を利用して生育していることが示された。 2、RNA-Seq解析 本事象を遺伝子発現の側面から検討するためRNA-seqを行った。その結果、アルカン内での生育に不可欠な代謝経路の遺伝子が、静止条件に比べ生育条件において、高度に発現していた。ここから、アルカン内に転移する場合においても、通常の反応経路が機能しており、アルカン中の溶存酸素を利用していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初本研究では、有機溶媒中で行われる生命活動を包括的に理解するするため、各種有機溶媒添加条件でベースのオミックスデータを取得し、それらをそれぞれの切り口で比較しながら、有機中で営まれる生命活動を考察してする計画を立てていた。この過程で、研究期間序盤の段階で、有機溶媒中の溶存酸素濃度を測定できるようになったため、まずは溶存酸素の利用という観点を中心に研究の流れをシフトさせた。 その結果、多くのRhodococcus 属細菌が、完全培地を用いた二相培養条件下で、生きている細胞がアルカン相に転移した際に、アルカン中の溶存酸素を利用して、呼吸していることを明らかにした。供試した限り、この現象はアルカンの種類に関係なく起こったことから、Rhodococcus 属細菌にとって一般的な能力と考えられた。 これらの結果を受け、遺伝子発現を検討するためRNA-seqを行ったところ、結果、アルカン内での生育に不可欠な代謝経路の遺伝子が、高度に発現しており、有機溶媒中での生命活動を裏付けた。 一方これらの研究過程で、アルカン相に転移した細胞が高度の耐熱性を有することを見出した。具体的には、培地/アルカン二相培養系で培養した培養液を100℃で10分以上加熱しても一部生き残る菌が存在した。各条件での生存率を検討すると概ね0.1%程度であり、この結果は、アルカンの種類に関係なく確認されたことから、Rhodococcus 属細菌はアルカンに転移することで熱耐性を獲得することが示された。これは当初計画にはなかった新しい事象であり、今後の研究の新たな核になるものと考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において、多くのRhodococcus 属細菌が有機溶媒中の溶存酸素を利用して飼育していること、および、アルカン相に転移したRhodococcus 属細菌の細胞は、高度の耐熱性を有することを明らかにした。特に後者の事象は、研究着手当初の目論見には含まれていなかった副産物的な成果であるが、産業的に非常に有用な性質である。それ故今後の研究では、当初案の計画に加え、本耐熱性の機構も検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
2018年度の研究で、Rhodococcus属の多くが、有機溶媒中に存在し、有機相の溶存酸素を利用し生育することが示され、関連する遺伝子群を特定するため、2019年度はトランスクリプトーム解析の結果をこの観点から解析する予定であった。しかしながら、本年度、有機相に存在する細胞が非常に高い耐熱性を有することを新たに見出したため、研究計画の変更・期間延長が必要となった。 次年度は、耐熱性も対象としたトランスクリプトーム解析を行っていく予定である。
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Research Products
(1 results)