2019 Fiscal Year Research-status Report
草本系・木質系(落葉)バイオマス高度資源化プロセス
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17K20073
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
久保 幹 立命館大学, 生命科学部, 教授 (60249795)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 草本系バイオマス / 木質系バイオマス / 土壌肥沃度 / 総細菌数 / 総炭素量 / 総窒素量 / 総リン量 / 総カリウム量 |
Outline of Annual Research Achievements |
森林バイオマス(含む樹園地)の土壌環境データベースを構築するため、全国139か所の土壌肥沃度指標(SOFIX)分析を実施し、データベースを構築した。本データベースから、森林バイオマス(含む樹園地)の総炭素総窒素量、総リン量、総カリウム量の平均値は、それぞれ24,000 mg/kg、1,460 mg/kg、5,370 mg/kgであり、有機物が蓄積傾向であった。これらの数値は、畑と水田に比べると、総炭素量と総カリウム量は多い傾向にあった。これは、落葉・落枝中の成分と連動しており、これらが土壌へ蓄積することが原因であると思われた。また細菌数の平均値は7.4×108 cells/gであり、水田と畑の間の数値に位置していた。 本研究環境データベースから、森林バイオマス(含む樹園地)の基準値(minimum value)は、総細菌数≧2.0×108 cells/g、総炭素量≧12,000 mg/kg、総窒素量≧1,000 mg/kg、総リン量≧1,000 mg/kg、総カリウム量≧1,500 mg/kgであり、推奨値(recommended value)は、総細菌数≧6.0×108 cells/g総炭素量≧25,000 mg/kg、総窒素量≧1,500 mg/kg、総リン量≧1,100 mg/kg、総カリウム量:2,500~10,000 mg/kgであると判断した。 森林バイオマスである木質バイオマスと草本系バイオマスを主要な土壌成分として、土壌肥沃度指標の最適値に合わせた有機土壌を作製した。本有機土壌を用いた植物栽培において、小松菜、シュンギク、マメ、トウモロコシ等において、化学肥料を用いた栽培と比べると1.2~1.4倍高い植物成長を得た。森林や草本由来バイオマスが有機土壌として十分に機能することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題である、草本系バイオマスや木質バイオマスの含有成分解析とその有効利用に関しては、森林環境(含む樹園地)の土壌肥沃度解析を実施し、計画通り総細菌数、総炭素量、総窒素量、総リン量、総カリウム量など、19項目のデータベース化を行った。またこれまでに構築した畑と水田土壌環境のデータベースとの比較解析を完了し、基準値(minimum value)と推奨値(recommended value)を決定した。 応用面においては、余剰草本バイオマスと余剰木質バイオマスの資源化を目指し、これらを有機土壌のベース土壌として使うことを考案し、人工的な有機土壌を作製した。この有機土壌は安定した細菌数と細菌叢を示し、植物成長においても良好な結果が得られた。またこれらの再現性も確認できた。これらの知見を基盤として、本格的な人工有機土壌製造への展開基盤が構築できた。 森林バイオマスと草本バイオマスの含有成分を明らかにしたことから、有機肥料としてブレンド化や無機化の解析が終わり、新たな展開が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究により、森林バイオマスと草本バイオマスの含有成分を詳細に把握することができた。また、これら余剰バイオマスは、特徴のある含有成分を有しており、これらの組み合わせ(ブレンド化)により有機土壌や有機肥料への展開が可能であることが明らかとなった。 これらの余剰バイオマスを資源化し、世の中に普及させるためには、次の課題があることがわかった。 (1)エネルギーを必要としない、または最小限のエネルギー使用による乾燥工程の構築、(2)新規バイオマス資源と有機土壌の工業的製品化プロセスの構築およびその再現性、(3)森林バイオマスや草本バイオマスの輸送プロセスの検討、(4)新規バイオマス資源や有機土壌のマーケティング これらの課題解決は、余剰バイオマスの処理に苦慮している自治体や産業界との連携により可能であるとの感触を得ており、本研究成果による産業的応用への展開が期待される。
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Causes of Carryover |
草本系及び木質系のバイオマス分析検体数が予想以上に多く、解析に予定より多くの時間を要した。また、より正確なデータベースの構築には、これらの分析 データを入れる必要があり、研究計画見直しが必要になったため補助事業期間を1年延長することとしたい。 次年度使用額の使用計画は、土壌肥沃度指標(SOFIX)の分析項目に従い、総炭素量、総窒素量、総リン量、総カリウム量、窒素循環活性、リン循環活性等、19項目の測定を実施する。
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