2021 Fiscal Year Research-status Report
形質介在効果の害虫防除への応用:捕食者存在下でなぜ害虫の作物被害は減少するのか?
Project/Area Number |
17K20074
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
馬場 友希 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, 上級研究員 (70629055)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 洋典 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物多様性領域, 研究員 (70573624)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2023-03-31
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Keywords | 形質介在効果 / 化学分析 / 害虫防除 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、実験対象となる植食性昆虫の維持が困難であるため、飼育及び入手が容易なヨーロッパイエコオロギを用いて、クモの糸に対する忌避反応を調べた。11cm×13cm×9cmの容器を2区画に仕切り、クモ(ドヨウオニグモ Neoscona adianta)のしおり糸を巻き付けた餌容器とそうでない餌容器(無処理)をそれぞれ用意し、コオロギが採食時にどちらの容器を選ぶか、あるいは容器間で反応に違いが見られるかどうかを比較した。予備試験として数個体で反応を観察した結果、どの個体においても、クモの糸を付着させた餌容器で継続的に採餌を行う様子が観察され、処理間で大きな違いは見られなかった。このことから少なくとも室内で維持されているコオロギではクモの糸を忌避しない可能性が示唆された。今後の実験では少なくともクモとの遭遇経験のある野外の昆虫を対象に実験を行う予定である。 この他に文献情報を基にクモの糸を効率よく収集するための道具をプラスチックケースと棒状の木材を組み合わせて作成した。少なくともヒメグモ科・コガネグモ科に関しては、この道具を用いて、実験に必要な量の糸を採取できることが確認された。 糸の化学分析に関してはコロナ禍により分析に必要な数のクモを集められなかったため、今年度も実施できなかった。次年度は先述の糸の採集道具を用いて、様々なクモ種の糸を対象とした化学分析を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍により、野外調査および室内実験を行うことができなかったため、入手が容易なヨーロッパイエコオロギを用いた実験のみしか実施できなかった。またクモの採集を行うことができなかったため、クモ糸の化学分析も実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の調査により、クモ糸への忌避反応は対象となる生物の分類群や生育環境(室内飼育系統か、あるいは野外系統か)によって異なる可能性が示唆された。また対象となる昆虫分類群によっても採食生態(雑食者か、植食者か)が異なるため、クモ糸の忌避反応実験に関して、生物種によって実験設定を変えるなどの工夫が必要と考えられる。次年度は研究の方針を変え、まずクモ糸に対して反応を示す分類群のスクリーニングを行い、限られた時間で研究目的を達成できるように工夫する。またそれと並行して、コガネグモ科・ヒメグモ科の数種を対象に、糸の化学分析を並行して行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、実験に用いるクモと植食性昆虫を採集するための野外調査が行えなかった事とクモの糸の化学分析を実施できなかった事から、次年度使用額が生じた。この予算を用いて、次年度はクモ糸に対する植食性昆虫の忌避反応を調べるための実験、およびその至近要因を解明するためのクモ糸の化学分析等を実施予定である。
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