2017 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリアの品質管理を科学するナノデバイスの開発
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17K20076
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山田 勇磨 北海道大学, 薬学研究院, 准教授 (60451431)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 薬物送達システム / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、神経細胞におけるマイトファジー(ミトコンドリア選択的なオートファジー)の誘導不全が進行性の神経変性疾患であるアルツハイマー病やパーキンソン病の発症原因の一部として報告されており、ミトコンドリアの品質維持と疾患解明・治療は非常にホットな研究領域として注目されている。本申請研究では、神経細胞をターゲットとし、①ミトコンドリア標的型ナノデバイスを用いたミトコンドリア傷害の誘発、②ミトコンドリア品質低下によるオートファジー誘導の検証の順に研究を進める。平成29年度は、「ミトコンドリア標的型ナノデバイスを利用したミトコンドリア傷害の誘発」に関する下記の項目を中心に研究を遂行した。
①神経細胞を標的とするナノデバイスの構築 神経細胞を用いて、細胞導入能の評価 (フローサイトメトリーの利用)、細胞内動態観察 (共焦点レーザースキャン顕微鏡の利用)を行い、神経細胞におけるMITO-Porterの細胞導入能、ミトコンドリア送達能を最適化した。 ②オートファジー誘導を可能とするMITO-Porterの構築 共同研究者・田村らが設計したオートファジー誘導分子を内封したMITO-Porterの調製に成功した。本MITO-Porterを細胞に添加し、オートファジー誘導をマーカータンパク質LC3 IIをウエスタンブロッティングを用いて検出した(初期検討のため、MITO-Porterでの送達実績のあるHeLa細胞を用いた)。その結果、MITO-Porter添加によりオートファジーが活性化される事を確認した。さらに、オートファジー誘導分子と活性を比較したところ、MITO-Porterは数十分の一の投与量で同等のオートファジー活性を示す事を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経細胞に最適化したMITO-Porterの構築に成功した。また、オートファジー誘導分子を封入したMITO-Porterの構築を行い、HeLa細胞を用いた検討においてオートファジーが誘導させることを確認した。オートファジーの検証はH30年度の目標であったため前倒しで研究を進める事ができている。一方で、神経細胞での機能評価が行えていないが、ここまでに示した内容はH29年度に計画した全ての研究内容が網羅されており、研究の目的を達成する多くの成果を得ることができた。 以上より、現在までの達成度は『おおむね順調に進展している』と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、『2. ミトコンドリア品質低下によるオートファジー誘導の検証』に関する研究を中心に下記に記載した計画で研究を進める予定である。
① オートファジー誘導の検証: MITO-PorterをSH-SY5Y細胞に添加した後に、オートファジー誘導の検証を行う。また、傷害ミトコンドリアを貪食するオートファゴソームを蛍光標識し、共焦点レーザースキャン顕微鏡を用いた経時的観察によって行う予定である。 ② オートファジー誘導に最適なミトコンドリア傷害条件の探索: MITO-Porterを用いたマイトファジー誘導時 (LC3-IIタンパク質検出時)のミトコンドリア傷害の度合いを測定する。本評価によって得た情報を基に、ミトコンドリア傷害 (活性酸素量、膜電位、融合・分裂、など)をミトコンドリア標的型ナノデバイスを用いて調節し、オートファジー誘導に最適なミトコンドリア傷害の条件を見出し、最適なオートファジー誘導プロトコルを作成する。
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Causes of Carryover |
次年度は最終年度であるため、統計解析などのために多数のデータ取得が必須となる。そのため、これまで以上に細胞培養用試薬、ナノ粒子調製などのための消耗品費が必要となる。これらの消耗品費のために本未使用額を有効に活用したい。
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Remarks |
「ミトコンドリア病」の新しい治療法の研究開発を目指す創薬プロジェクト『7 SEAS PROJECT』の構成メンバーとなり、研究成果を医薬品へと発展させ、医療・経済・社会への貢献を目指し、新たな研究を計画・推進中である。
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Research Products
(14 results)