Outline of Annual Research Achievements |
本研究では, 申請者らが開発したリンパ節腫脹マウスであるMXH10/Mo-lpr/lprマウスを使用して, 酸素バブルと超音波を用いた転移リンパ節に対する新しい放射線治療法の開発を目的にしている. 本研究で対象にするリンパ節は転移初期段階における転移リンパ節であり, 臨床では転移偽陰性リンパ節と判断されるリンパ節である. 本年度において, まず, マウスにおいて転移偽陰性リンパ節を作製し, ニードル型酸素分圧装置を用いて転移偽陰性リンパ節内部の酸素分圧を測定したところ, 計測値は40 pO2 程度であり, この値は尾静脈中での値と統計的な有意差はなかった. また,マイクロCTや血流解析によっても, 転移偽陰性リンパ節の内部構造は正常リンパ節と違いはなかった. この意味は, リンパ節内の腫瘍細胞の放射線感受性を高めために, 酸素バブルと超音波を用いるという当初の実験手法は必要なく, 転移リンパ節のみに放射線を照射することができれば, 転移リンパ節は効率よく治療されることを示唆している. この概念をさらに実証するために, 単一リンパ節のみが放射線照射可能な照射システムを開発し, リンパ節単回放射線照射実験を実施することにした. 従来のマウス実験では, 単一リンパ節に放射線を照射することは不可能であり, 全身照射を前提にしており, その致死線量は8Gy程度であった. 今回の実験系では, マウスを致死させずに, 単一リンパ節に単回照射で8Gy以上を達成できる新たなマウス実験モデルを開発することに成功した. さらに驚くことに, 放射線照射を実施後,照射部位以外のリンパ節が縮小するアブスコパル効果が確認された. 本研究においては, 放射線治療と腫瘍免疫をつなぐ新しい免疫放射線療法の道を拓く可能性を提示するにいたった.
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