2017 Fiscal Year Research-status Report
3次元培養幹細胞由来の細胞外小胞体を用いた疾患治療因子の探索
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17K20086
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内田 智士 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任助教 (20710726)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞外小胞 / スフェロイド / 3次元培養 / 間葉系幹細胞 / 骨再生治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
間葉系幹細胞(MSC)は、多分化能のほか、様々な機能を有し、細胞移植を用いた再生医療において大きな期待を集めている。我々はそのMSCを3次元のスフェロイドとして移植することで、脊髄損傷において、単層培養MSCを用いた場合と比べて、治療効果が向上することを報告してきた。また、そのメカニズム解析において、分泌因子、とりわけ、エクソソームをはじめとする細胞外小胞の関与が示唆された。そこで、細胞外小胞の解析を着想した。 本年の研究で、MSCスフェロイドの方が、単層培養MSCと比べてより多くの数の細胞外小胞を分泌することを見出した。また、その機能を評価したところ、スフェロイド由来細胞外小胞の方が、単層培養由来の細胞外小胞と比べて、強い抗炎症作用や、骨分化誘導作用を持つことも見出した。さらに、スフェロイド由来と、単層培養由来の細胞外小胞の細胞外小胞の数を揃えて同様の評価を行った場合も、スフェロイド由来細胞外小胞の優位性が示されたことから、スフェロイド由来細胞外小胞は、単層培養由来細胞外小胞と比べ、『数』だけでなく、『質』の上でも違いがあることが示唆された。さらに、細胞外小胞に含まれるmiRNAの解析においても、『質』の違いを示唆する結果が得られている。 以上の細胞外小胞の解析と並行して、実際にMSCスフェロイドと単層培養MSCを骨再生治療に用いた場合の治療効果についても検討した。ラット大腿骨に作製した骨欠損部に対する骨再生効果を比較したところ、スフェロイドで優れた効果が得られた。これらの結果から、実際の治療においても、細胞外小胞が大きく寄与している可能性も想定される。 今後、細胞外小胞に関するさらなる解析を進め、機能をもつ因子の単離に取り組む。再生医療分野において、細胞移植における治療メカニズム解析は十分に進んでいないが、本研究はそれに大きく貢献できる可能性を持つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スフェロイド由来細胞外小胞は、単層培養由来細胞外小胞と比べ、優れた機能をもつことが、再現性を持って示された。また、『数』だけでなく、『質』の上でも違いがあることが、網羅的なmiRNA解析等で明らかとなった。本研究の根幹にあたる部分が実証されたことから、初年度として進捗は順調であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように、本研究の根幹である、スフェロイド由来細胞外小胞と単層培養由来細胞外小胞が『質』において大きく異なるという現象に対して、確証を得ることができた。そこで、今後よりこの現象を深く掘り下げる。特にmiRNAに重点を置き、細胞外小胞に関するさらなる解析を進め、機能をもつ因子の単離に取り組む。さらに、そのmiRNAの機能を、個々に検証することで、優れた治療因子を同定できることが期待される。これは、細胞移植治療のメカニズム解析に寄与できるほか、その因子を核酸医薬の形で投与するという新たな治療法の構築にも繋がる。核酸医薬は、細胞移植治療と比べより経済的に安価であることから、核酸医薬を用いることで再生治療の成果をより広く臨床において普及できる可能性がある。
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Research Products
(8 results)