2018 Fiscal Year Research-status Report
自発的に形成された細胞内力学場での物理刺激の時空間制御
Project/Area Number |
17K20093
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古川 克子 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (90343144)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
|
Keywords | メカニカルストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞へのメカニカルストレス負荷に関する従来の研究では,単に物理刺激の細胞に与える効果のみに焦点が絞られてきた.一方,生体内の細胞は,局所環境に応じて細胞内の力学場を自発的に変化させ,それが高度な生物学的な現象に結びついていると考える.従って,外部からの物理刺激に対する生理的意義のある細胞応答の解析のためには,自発的に形成された細胞内の力学場(空間)の下で,外部からダイナミックなメカニカルストレスを負荷し,その応答を調べること(時空間制御機構の解明)が重要であると考えた.そこで本研究では,新規な高速・高精度・大型マルチレーザ光造形装置を開発することにより,3次元的なナノ/マイクロ凹凸構造界面を有する基板を作製し,細胞内にあらかじめ自発的な力学場(応力)を形成して,外部から連続したメカニカルストレスを負荷することによる細胞応答を調べることを目的としている.最終的に自発的に形成された力学場のメカニカルストレスによる時空間応答に及ぼす効果を,生理的・病的な観点から解析し,疾患発症と恒常性維持の根本を理解するための学術的な基盤の構築を目指した研究を推進している.本研究ではこれらの目的を遂行するための工学的な基盤技術である新しい造形技術の開発を平成30年度に行った.本研究で開発した新技術を用いることによって,ナノからマイクロオーダーの構造物の造形精度をもつ基盤の作製に成功している.平成31年度は,これらの基盤に接着した細胞に物理刺激を負荷する実験を予定している.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H29年度に作製した新しい造形装置を用いて,細胞基盤のための造形物の作製を行った.これまで造形が不可能であったライン状および格子状の曲面形状を造形した.曲面の細胞内応力分布および幹細胞分化制御に及ぼす効果を調査するために,間葉系幹細胞を作製した基盤に播種して,その構造物の効果を検証するための実験を行った.基盤への細胞接着には問題がないことを検証した.次に,基盤の凹凸構造の細胞機能に及ぼす効果を検証するための生化学的な検証実験を行った.その結果,遺伝子の発現解析からは,実験データの再現性に問題があり,統計学的な解析が可能となるデータの収集に問題があることがわかった.一方,染色などのタンパク質レベルでの発現解析においては,一定の傾向を示すデータの収集に成功した.
|
Strategy for Future Research Activity |
凹凸構造を有する基盤にメカニカルストレスを負荷できるデバイスの作製を行う.界面形状の違いが外部からの細胞へのメカニカルストレス負荷に影響を与えないように,表面構造はできるだけナノスケール,材料の基板は十分な厚みをもたせるように装置全体の設計を行う予定である.これらの装置を用いて,基盤によって発生させた細胞内部の応力と,外部からのメカニカルストレスによる外部応力の同時負荷による効果を検証するための実験を行う.細胞内外のタンパク質の分布や蛍光の輝度分布を計測するための実験はサンプル調整の都合から平成31年度の実験として実験計画を変更した.
|
Causes of Carryover |
単光子レーザと2光子レーザを用いて造形中にリアルタイムに変更できる装置の開発を行うことにより作製が可能となる基盤上で細胞を播種して,細胞内外の応力状態をコントロールする実験を行うことを予定している.これらの実験を通じてアウトプットとして計測される細胞内外のタンパク質の分布や蛍光の輝度分布を計測するための実験をサンプル調整の都合から次年度に行うように予定を変更した.その結果,2,106,493円を次年度に使用する予定で繰り越し申請を行った.
|