2017 Fiscal Year Research-status Report
細胞核への力学刺激によるDNAの分散効果を利用した細胞の機能制御の試み
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17K20102
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松本 健郎 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (30209639)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 英次郎 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (20581614)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | バイオメカニクス / メカノバイオロジー / 細胞核 / クロマチン / DNA / 力学刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞の機能発現が核内のDNAの物理的な分布の違いに影響されることが認識され始めている.例えば,血管壁内の平滑筋細胞では高濃度のDNAが核膜付近に集中しており,増殖は殆どしないが,これを数週間培養すると増殖が盛んになるが,この際はDNAが核内に緩やかに満遍なく拡がっている.後者では,DNAの2重ラセンが緩みやすいためmRNAの合成が生じやすく,結果としてタンパクの合成,更には増殖が活発になるのではないかと考えられている.一方,我々は,核内DNA分布が核の変形で容易に変化することを見出した.そこで本研究では,細胞核を定量的に変形させた際の核内DNA分布の変化を調べ,これと細胞機能の変化との関係を調べることを目的として2年に亙る研究を進めている. 研究初年度の本年度は,使用の容易な細胞株(骨芽細胞様細胞MC3T3-E1)を用い,その核に圧縮刺激を加える実験系の開発に取り組み,細胞に圧縮刺激を加えた後のクロマチンの変化を調べた.すなわち,顕微鏡下でクロマチンをHoechst33342で染色した細胞をフィブロネクチンコートしたスライドグラス上に播種し,細胞が基板に軽く接着した後,先端を直径30μm程度の球状に加工したガラスマイクロピペットをマイクロマニピュレータを操作して細胞に押付け,核を5μm程度圧縮した後,元に戻した.核圧縮前,圧縮直後,圧縮から3分後の3通りの条件で核内のクロマチンの凝集塊の個数を計測したところ,圧縮から3分後に凝集塊の個数が有意に減少することが判った.そこで次に,一度に多数の細胞核を圧縮するために,フォトリソグラフィ法で作製した型を利用して,一辺100μm,深さ10μmの正方形のウェルが多数並んだPDMS製基板を作製した.現在,このウェルにひとつづつ細胞を落とし込み,上からカバーグラスを押し付ける系の試作を試みている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度に多数の細胞に同時に圧縮刺激を加える系まで試作する予定であったが,実験担当者が実験操作に不慣れであった点,上から押し付けるカバーグラスの平面度やPDMS基板とカバーグラスの平行度が不十分であった点などから,多数の細胞を同時に圧縮する系の確立がまだできていないため.
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Strategy for Future Research Activity |
実験担当者の技術は向上したので,その点の問題は少ないと考えている.カバーグラスの平面度については,平面度の高いガラス板を探して使用する,ウェルの深さを減らすなどの方法により多数の細胞核を一度に圧縮できる系を確立していく予定である.
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Causes of Carryover |
次年度使用額は3万円余りであり,当該年度所要額の1%以下であるため,無理に使い切ることはしなかった.来年度の研究計画で十分使い切れる金額であると考えている.
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