2018 Fiscal Year Research-status Report
メゾスケールにおける心臓への長期的物理刺激に対する生理的・生物的応答の探査
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17K20113
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
三井 敏之 青山学院大学, 理工学部, 教授 (40406814)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 心筋細胞 / リアルタイムプロセス / 同期 / 発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
自己組織化・自律拍動をする心筋細胞の集合体へ、培養下にて外部より力学的刺激を局所的に与え続ける。そして、集合体のモフォロジーや自律拍動の変化の様子を観測して、物理的環境が、細胞に与える影響をシステマティックに調べることが目的である。細胞は孵化前embryo より初代培養にて、心筋+繊維芽細胞の共培養の系を用いた。結果は、1. 刺激を与えた心筋細胞の集合体のモフォロジーは、刺激なしに比べて、心筋細胞の集合体の厚さや繊維芽細胞の異方性に特徴的な変化が見受けられた。しかし、刺激を与えるプローブの可動範囲や向きにより敏感で、現在も、システマティックにプローブのパラメータをsweepして観測を続けている。本年度は伸縮の動きについて、OPTICAL FLOWを用いて調べ、刺激を与えたほうが、simpleに伸縮の振幅が大きくなることがわかった。自律拍動の変化は前年度に結果として報告した。2018年度は、更に周期のパラメータの幅を広げて、自律拍動間隔(IBI)が1秒以下の場合、1秒以下の刺激周期にて、集合体のIBIは1秒以上に遅くなった。自律拍動間隔が1秒以上の集合体は、刺激により3割程度の拍動間隔が早くなるが、同期はしなかった。伸縮の幅は、コントロールでは短くなり、刺激があると長くなる。興味深い観測結果としては、24hの刺激を止めた後では、自律拍動が不安定化して、3~4h以内に自律拍動が停止するサンプルが多く観測され、統計的な議論をするために継続して実験を行っている。装置開発では、刺激パラメータのリアルタイムフィードバック制御機構の構築が急務で、USB顕微鏡をもちいた高速画像処理による機構を、ナショナルインストルメント社のlabviewをプラットフォームにして完成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度も自律拍動をする心筋細胞の集合体への刺激において、上記のように、外部刺激の周期や、刺激のプローブの速さ、振幅もパラメータとした。24~48h程度の間の刺激にて、典型的な変化を統計的に得たいのだが、各パラメータに対して、相関や有意差を得るほどの結果が得られていない。特に刺激の周期が短い、刺激プローブの速さが速い場合は、その“影響”を期待できるのだが、伸縮のモーションが止まるcaseが多かった。一方で、周期が長い、刺激プローブの速さが遅い場合は、集合体の自律拍動は、刺激の影響を受けなかった。注意すべきは、拍動のモーションが止まっても、活動電位の周期的な発火が持続することが、Caイメージングで観られた。当初の本課題の領域を超えるが、次の拍動が起こる基準といわれている、活動電位持続時間と、1細胞のスケールにおける伸縮の変化を観測して、間接的に刺激のサルコメアへの影響を調べる必要性を認識した。これらの観測も今後に検討する。
拍動モーション観測に限っては、完成したリアルタイム画像プロセッシングによる、刺激パラメータの自動制御(リアルタイムフィードバック機構)に期待する。刺激への感度が数時間のスケールで変化することは、毎時の動画観測より予想できる。典型的に刺激直後の2~3時間における心筋細胞の集合体の拍動は不安定だが、その後、一部同期もみられるが、最終的には同期せず、独自の自律拍動を維持するか、拍動モーションを止める。そこで、リアルタイムで自律拍動の拍動間隔や振幅を検出しながら、刺激のパラメータを調整することで、“適切な”刺激を、~48h程度に連続して与え続けて、その影響を観測する。これからは、自律拍動の変化に対する、刺激のパラメータの調整が研究の鍵となる。
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Strategy for Future Research Activity |
リアルタイムフィードバックによる刺激のパラメータ制御に加えて、鶏胚の心臓の心筋細胞について、day 10から、day 6~8に変えることも試みる。早い段階での心筋細胞の培養により、刺激への更なる応答も期待できる。また、系は共培養、つまり、繊維芽細胞の心筋細胞と一緒に培養するので、分裂を繰り返す繊維芽細胞の増加が顕著に現れる。この培養系の基本として、繊維芽細胞の比率は下げて心筋細胞と培養するが、今後は、この比率を変えても実験を行う。ゴールは、統計的に刺激による拍動間隔、振幅、安定性、集合体のモフォロジーの変化を観測して、その要因としての、チャンネルやギャップジャンクションの密度変化等を調べて、相関を観る。つまり、刺激のパラメータを、より効果的にしても、拍動を維持して、モフォロジーの変化を最大限にするには、これまでの実験結果より、繊維芽細胞のプレゼンスが必要だと予想する。
次に1細胞の解像度での高速観測を検討する。現在の観測系の画像取得rateには限界があるので、共同施設の使用等検討して、上記で説明した活動電位持続時間と、伸縮の速度について調べる。
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Causes of Carryover |
装置の作製にて、パーツから買い揃えての開発により、経緯費が削減できたが、一方で、観測のターゲットを再確認して、蛍光試薬の再検討に時間を費やし、また、本年度に急務となった、高速度のCMOSカメラでの観測に関して検討した経緯があり、それぞれの執行が遅れている。
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Research Products
(6 results)