2017 Fiscal Year Research-status Report
多臓器転移がんのin vivoリアルタイム観察を実現する近赤外蛍光トラッキング
Project/Area Number |
17K20115
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
上村 真生 東京理科大学, 基礎工学部材料工学科, 助教 (80706888)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 転移がん / ナノ粒子 / 蛍光イメージング / 近赤外 / ポリマーミセル |
Outline of Annual Research Achievements |
がんの死亡率は本邦における死因の第1位であり,がんの症状悪化や治療が困難になる大きな原因のひとつが,がん細胞の転移である。そのため,体内においてがん細胞の転移を迅速かつ精確に観察・追跡可能な技術を確立することが,がんの基礎研究のみならず,優れた診断・治療法を開発するためにも重要な課題となっている。そこで本研究は,生体組織透過性が極めて高い, 波長1000nmを超える近赤外(OTN-NIR)蛍光を発する生体適合性高分子蛍光プローブを新規に設計・合成し,マウスの体内におけるがん細胞の多臓器転移挙動をリアルタイム追跡することを目的としている。 OTN-NIR蛍光を示す物質として,量子ドットやカーボンナノチューブ,蛍光セラミックスナノ粒子などが報告されているが,これらの無機・金属ナノ粒子は高濃度で使用した場合に細胞毒性を示す場合があるため,長期間に及ぶがん細胞の転移追跡においては,がん細胞の増殖スピードに影響を与えてしまう可能性がある。そこで本研究では,生体適合性高分子材料と低分子有機蛍光色素を用いて,完全に有機分子のみで構成されるOTN-NIR蛍光ナノ粒子を新規に合成する。このナノ粒子プローブ合成に用いる各有機分子は細胞毒性がほとんど無いため,がん細胞に取り込ませても増殖能などの細胞の機能に影響を与えることが無く,長期間の蛍光追跡が可能になる。さらに本研究では,この蛍光プローブを用いて,代表的な転移がんである肺がんと乳がんの脳腫瘍および骨腫瘍転移をモデルマウスで再現し,その転移挙動を蛍光観察でリアルタイム追跡することを目指す。 1年目の今年度は、蛍光プローブの作製を行った。OTN-NIR有機蛍光色素を親水性のポリエチレングリコール(PEG)と疎水性のポリスチレン(PSt)のブロック共重合体からなるポリマーミセルのコア部に内包することで、水中で使用可能な蛍光プローブを作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた高分子重合による蛍光ナノ粒子合成を進める前段階として、ポリマーミセルに蛍光色素を内包する手法による蛍光プローブ作製を行った。この結果、ミセル形成による蛍光色素の安定化によっても、高い安定性と蛍光特性を有する蛍光プローブを得ることができた。実際にこのプローブを用いて、マウスのin vivoイメージングの予備実験にも成功しており、今後、この蛍光プローブの機能化を進めることでさらなるイメージング性能の向上が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、蛍光プローブのがん細胞への導入を促進することに取り組む。具体的には、ナノ粒子径の制御や、ナノ粒子表面へのリガンド抗体の導入を検討することで、より効率的な細胞内導入を進める。その後、これらの蛍光プローブおよび蛍光ラベル化がん細胞を用いたin vivoイメージングを進める。
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Research Products
(5 results)