2021 Fiscal Year Research-status Report
インデックス型家畜保険の需要増加の要因と長期的な経済効果の分析
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17K20142
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
池上 宗信 法政大学, 経済学部, 教授 (70814424)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | インデックス保険 / 干ばつ / 乾燥地 / 家畜 / 遊牧 / 貧困の罠 / エチオピア |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題5(牧畜家計の貧困の罠と保険需要)では、2つの論文を進展させた。1つ目の論文は、2020年度からの継続であり、貧困の罠を生み出す構造として、保有家畜数が減少し、乾季に遊牧をしなくなることが、畜産の生産性をどれだけ減少させるのかを調べている。分析には目処がつき、論文の執筆を続けている。 2つ目の論文は、共著論文であり、牧畜家計の貧困指標として、家畜頭数と金銭所得に注目し、それぞれの大小で、家計を以下の4つのグループに分類した。1)伝統的な遊牧を続ける家計、2)家畜頭数を維持しながら、金銭所得も大きい家計、3)家畜頭数が少なく、伝統的な遊牧をせず、金銭所得中心に移行した家計、4)家畜頭数、金銭所得ともに少ない貧困家計の4グループである。2009年から2015年にかけて、貧困が増大、特にグループ1からグループ4に移行した家計が多いこと、干ばつ時にその移行が多いことを示した。英文査読雑誌にこの論文を投稿、改訂、再投稿した。 研究課題3(保険の長期的な経済効果)、研究課題4(保険需要のダイナミクス)では、以下の2つの研究を進めた。一つ目は文献サーベイ論文である。国際家畜研究所に在籍した日本人研究者2名と共著で文献サーベイ論文を執筆した。論文の3分の1を、研究課題3、4に関する先行研究のサーベイに費やしている。下記の研究発表、雑誌論文にあるように英文査読雑誌に刊行された。 2つ目は、インデックス型家畜保険から得た学術的知見および政策的含意を共著の学術書としてまとめるというものである。学術書のプロポーザルが英文出版社に採択された。2022年度も執筆を継続する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究課題3、4、5は2019-2021年度に合計6本の論文を刊行しており、進捗に遅れはない。一方、研究課題1(保険需要を増大させうる政策の経済実験)、研究課題2(2017年の大幅な需要増加の要因)の進捗に遅れがある。 研究課題1(保険需要を増大させうる政策の経済実験)、3、4のための経済実験、追跡家計調査を2022年2月に実施した。経済実験は、潜在的な保険購入者のリスク選好に基づく保険購入・不購入のアドバイスであり、この政策のもたらす保険購入への効果、家計への経済効果を調べる。ジョージア州立大学、コーネル大学、ユトレヒト大学、国際家畜研究所、エチオピアPolicy Study Institute、オロミア保険会社との共同研究として実施した。データの分析、論文の執筆は2022年度に持ち越された。 研究課題2(2017年の大幅な需要増加の要因)、4のためのインデックス型保険販売開始の2012年から2022年2月までの保険販売データにアクセスできることになった。データのクリーニング、分析、論文の執筆は2022年度に持ち越された。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように、研究課題1、2の進捗が遅れているので、これらを最優先に研究を継続する。研究課題2は、2022年5月にはデータを入手し、データクリーニング、分析を始められる予定であること、共同研究者の数も少なく、役割分担、日程調整に必要な時間もより少ないことから、研究課題1よりもさらに優先する。 研究課題1の経済実験、インパクト評価のための追跡家計調査は2022年度も継続され、共同研究者の数も多い。研究を早めるために、2022年度の経済実験、追跡家計調査のデータを待たずに、2021年度の経済実験、追跡家計調査のデータのみを用いて、分析、論文の執筆を始められないか、共同研究者達と議論したい。 研究課題3、4は、進捗が遅れている1、2より優先ではないが、2022年2月の追跡家計調査のデータを活用して、新たな分析、論文を執筆することが可能である。上記の研究課題1を早めるための同意が共同研究者から得られない場合は、研究課題3、4の新しい論文に取り組むことにしたい。
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Causes of Carryover |
理由:研究課題1および2の進展の遅れが、2018-21年度に経費を執行せずに、その分を2022年度に執行することになった理由である。 使用計画:研究課題1、3、4のための経済実験、追跡家計調査の実施を委託する際の謝金・費用として支出する。研究課題2のための保険販売データのデータ構築・クリーニングを委託する際の謝金・費用として支出する。研究課題1-5の論文発表の際の旅費として支出する。
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Remarks |
上のタイトルInsurance for Vulnerable Familiesの正しいタイトルは Insurance for Vulnerable Families Cuts Rural Poverty and the Cost of Aid by Half である。
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