2018 Fiscal Year Research-status Report
精緻で豊かな計算機視覚の実現に向けた認識と復元の統合
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17K20143
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西野 恒 京都大学, 情報学研究科, 教授
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Project Period (FY) |
2018 – 2020
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Keywords | コンピュータビジョン / 知能情報処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
人間の高次視覚は、見ているものを認識し、その物理的構成等を復元するという二つの重要な機能を備えており、これらの機能が密接に連携することにより、豊かな視覚知能を実現している。一方、コンピュータビジョンにおいて実世界の認識と復元は、互いに独立してその機能の実現が追究されてきた。本研究では、認識と復元を統合することにより、それぞれの現在の本質的限界を突破し、より精確で豊かな計算機視覚知能の実現を目指している。画像に写されたものを認識することによりそれらの復元が精緻になり、逆にその物理的構造や特性を明示的に復元することにより認識がより精確になるよう、両者の有機的統合を、統計的機械学習にもとづいた見通しの良い定式化と効率的な推定手法の導出により実現することを目指している。初年度となる平成30年度は、これらの研究目的に沿い、単一画像からの形状、反射特性、光源状況と物体姿勢の推定手法、主に水中を含む物体のより精確な3次元幾何形状の復元手法、幾何的特徴を保持する統計的モデルによる物体形状表現法、ならびに水面反射による形状復元手法の導出を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通り、初年度は主に認識にもとづく復元に関する研究に注力し、単一画像に写されている物体を認識し得られる情報を、それらの物体の形状ならびに姿勢と反射特性の分割推定、さらに、まわりの環境の精緻な復元する手法の導出を行っている。現在、深層生成ネットワークモデルを用いた反射特性の事前確率分布および深層ネットワークモデルを用いた光源状況の事前確率分布の抽出、さらに物体姿勢も含め、求める変数に関し微分可能な画像生成ネットワークの導出をおこなった。現在これらの結果を踏まえ、画像内の認識された物体に特化した形状モデルを用いた反射特性や光源状況の推定法の導出をおこなっている。これらの研究から派生し、30年度は4つの新たな物体形状復元手法の導出を行った。一つ目は、物体の幾何的特徴量を保持した統計的形状モデルの生成手法であり、2次元射影面上での自動位置合わせにより意味的特徴が対応付けされた形状基底の推定手法を導出した。二つ目は、単一画像からの物体形状の推定手法であり、形状表現を3次元混合正規分布モデルとし、3次元距離と多視点シルエット距離を用いて学習する深層ネットワークモデルを導出した。三つ目は、水中における物体の輝度勾配と光の減衰を用いた物体の法線と深度の同時推定手法であり、四つ目は、水面反射による物体のステレオ視からの形状復元である。これらの結果は、現在国内会議と国際会議にそれぞれ2件の論文として投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
31年度は、計画通り、単一画像から復元された形状や反射特性など物理特性の推定値を用いて、いかに緻密で豊かな認識がおこなえるか示すことを目的とする。このため、前年度において導出した、幾何的特徴を保持した統計的形状モデルを用い、画像内の物体領域に物体の姿勢を推定しつつ、形状を復元を統計的モデルのパラメタとして推定する手法を導出する。この結果と、前記の反射や光源状況の推定手法を組み合わせることにより、認識結果を最大限に利用した物体の物理特性の復元手法を示す予定である。さらに、これらの結果を踏まえ、複数枚の視点の微小に異なる画像列を扱うよう拡張することにより、より精度を高める予定である。また、前年度で大きな成果を挙げた、水中や水面を用いた物体の3次元形状復元手法についても引き続き新たな手法の導出をおこなう予定である。これらの結果は、本研究計画の目標である、計算機視覚のさらに豊かな実現に向け、水中という適用範囲を広げることにより大きく貢献すると思われる。
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Causes of Carryover |
次年度使用が生じた主な理由は、当初計画し検討していた研究博士研究員の採用に至らなかったためである。今年度は、使用計画の一貫として、4月からすでに博士研究員一名を採用し、さらに6月から特定教員一名も雇用する計画である。さらに、今年度はデータ準備及び収集に係る謝金の支出も研究規模の拡大とともに増大する予想であり、万全の研究体制を確保して、前年度と今年度請求した助成金を合わせた助成金を使用する計画である。
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Research Products
(4 results)