2019 Fiscal Year Research-status Report
miRNA生合成の調節機構とその影響のゲノムワイド解析
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17K20145
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
岡村 勝友 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (70817733)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | miRNA / RNAプロセシング / 遺伝子発現調節 / バイオインフォマティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝子発現は様々なレベルで絶妙に制御されている。そしてそのほんのわずかな異常が癌や脳機能障害といった疾患の原因となる。このような微妙な調節には蛋白質コーディング遺伝子の発現調節、とくに小分子RNAであるmicroRNA(miRNA)による調節機構は重要な働きを持っている。このことから、miRNA遺伝子自身の発現調節も非常に重要になる。本研究では、miRNA遺伝子の発現を転写後に調節する機構の重要性について網羅的にmiRNA転写と成熟型miRNAの発現量を多数のサンプルからのデータを比較し、miRNA遺伝子の転写後調節機構を網羅的に解析している。癌細胞株の遺伝子発現データを用いた解析から、miRNAプロセシングを制御する機構の候補が見つかり、生化学解析を進めている。プロセシング解析を行うための手法開発にも着手し、その手法について発表を行なった。さらに、神経特異的miRNAのmiR-124プロセシング調節とその神経分化における役割を解析し、有意義な結果を得た。これらの解析をさらに進めるとともに、論文としての発表を行なっていくことを予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ago2過剰発現によるmiR-124プロセシングの亢進について、点変異を導入したAgo2蛋白質を用いた実験により、さらに詳細な分子メカニズムに迫ることができた。試験管内と細胞内でのプロセシング実験系間で結果が異なることがわかり、細胞内でのプロセシング実験に集中し、miR-124ヘアピンにランダム変異を挿入したライブラリ構築法のセットアップを行った。Ago2過剰発現によるmiR-124プロセシングの亢進の生理学的意義を理解するため、マウス脳組織でのAgo2発現解析やES細胞分化系を用いた解析で進展があった。 癌組織におけるmiRNAプロセシング調節の網羅的解析では約1000種の癌細胞株の発現データを有するCCLE(Cancer Cell Line Encyclopedia)を用いて解析を行った。その結果、非常に多くのRNA結合タンパク質の発現量と細胞内における特定のmiRNAのプロセシング効率との相関を見出した。本解析の過程で、本年度の課題であったデータベースの整備(ゲノムブラウザミラーの立ち上げ、遺伝子発現データのダウンロードと可視化)やバイオインフォマティクス環境の整備(高性能コンピュータのセットアップとバイオインフォマティクスパイプラインの整備)を行うことができた。また、本研究の遂行のため、miRNAプロセシング阻害を行う手法の開発も行い論文として発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、当初の計画通り、一部をランダム化したライブラリーを用いて、Ago2過剰発現によるmiR-124プロセシングの亢進の分子メカニズムを解明できると期待している。またES細胞を用いた試験管内分化実験により、その生理学的意義を検証し、来年度中に結果を発表できると期待している。 癌組織におけるmiRNAプロセシング調節の網羅的解析はCCLEデータのバイオインフォマティクス解析をさらに進める一方で、同定されたRNA結合タンパク質と標的miRNAとの相互作用を生化学実験等を用いて検証し、RNA結合タンパク質がmiRNAのプロセシングを制御する分子機構の解明を進める。また、同時にTCGAデータの解析も同様に進め、培養細胞株のみでなく、実際の癌組織でのRNA結合タンパク質と標的miRNAとの発現相関を調べる。これらの結果や本研究分野の現状を慎重に吟味し、順次論文として発表していく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、研究室員の雇用を予定していたが、雇用を予定していた人材が他の職を選択したため、求人を再度行う必要が生じ、採用が遅れ、人件費に次年度繰越が生じた。最近、分子生物学の技術に精通した人材を慎重に選抜し、一名の技術員を採用することができた。また、経験豊富な技術員もう一名を2020年10月より雇用予定であり、人件費の増加が見込まれる。一方で本年度は実験の外注や消耗品費(シークエンス解析や分子生物学実験キット等)が想定よりも多くなったことから物品費が予定よりも増加したため、次年度使用分が減少した。学生の増加で研究室員数が2.5倍程度になることが予想され、今後の研究室の学生および職員数の増加に合わせて物品費が増加することを考え、次年度使用に回された研究費が来年度には相殺されると予想される。
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Research Products
(6 results)