2019 Fiscal Year Research-status Report
CRISPRスクリーニングを用いたヒトiPS細胞の内胚葉系分化機構の解明
Project/Area Number |
17K20146
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
遊佐 宏介 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授
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Project Period (FY) |
2018 – 2020
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Keywords | ヒトiPS細胞 / CRISPRスクリーニング / 細胞分化 / 内胚葉 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト多能性幹細胞の分化は、一般にマウスの胚発生による知見に基づいてシグナル伝達系を操作することにより、分化誘導のためのプロトコールが作製されてきた。様々なヒトES/iPS細胞でこれらプロトコールに対する応答性が異なることが知られており、どの因子がその応答性を変えるのかは不明である。本研究は、この因子の同定を順遺伝学的手法、つまりCRISPRスクリーニングにより同定しようとするものである。スクリーニング実施予定のヒトiPS細胞株において、Cas9安定細胞株の樹立、ゲノム編集効率の検討を完了し、未分化維持培養下で期待通りの遺伝子破壊効率が得られることを確認した。続いて、分化途中でのCas9によるゲノム編集効率を検討した結果、一部の株においてはゲノム編集効率が急速に失われ、スクリーニング不能であることが判明した。スクリーニング実施可能な株に関しては、膵前駆細胞から内分泌前駆細胞への分化に関わる因子のスクリーニングを実施した。また、分化途中での発現減少を解決するためCas9を内在性ハウスキーピング遺伝子座から発現させ発現抑制を回避させるシステムを構築することとした。GFPレポーターを用いた解析では発現は安定的に維持されることを確認している。これに加え、DNA二重鎖切断に伴う毒性を回避する方法として、CRISPR-iの応用も検討することとし、合わせてシステムを構築中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年10月に京都大学ウイルス・再生医科学研究所で着任し、研究室の立ち上げを開始し、年度内に大方の作業を終えることができた。しかし、令和元年度にも引き続き立ち上げ作業を継続する必要があり、また研究室の研究体制を構築する必要があったことより、当初の研究計画からは遅れが生じている。前年度中に作製しCas9によるゲノム編集効率を確認できたiPS細胞株を用いて、膵前駆細胞における網羅的遺伝子破壊の導入、膵β細胞段階でのマーカーに基づいた細胞分画の分取、シーケンス解析を完了することができたが、ポジティブコントロール遺伝子のヒットを確認することができたのみであった。このことは、スクリーニングの検出感度が低いことを示唆しており、更なる最適化が必要と思われる。また、スクリーニング実施予定のヒトiPS細胞株全てにおいてCas9の発現細胞株が得られた。いずれの株も未分化状態では非常に高い活性を保っており、この段階での網羅的遺伝子破壊は可能であると考える。分化後も安定に外来遺伝子を発現させるための内在性遺伝子座として、GTExデータを用いた解析からGAPDH遺伝子が最適であることを見出し、すでにノックインしたGFPの発現は安定に維持されることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、未分化維持状態において網羅的遺伝子破壊を実施し、未分化維持状態に関わるスクリーニング、また胚性内胚葉分化に関わるスクリーニングを、複数のヒトiPS細胞株で実施し、結果を比較、細胞株間による違いを同定する。また、すでに実施した未分化状態に関わるスクリーニングから得られた因子のうちの一つが、分化に影響を及ぼすことから、この詳細な分子機能解析を実施する。膵前駆細胞から内分泌前駆細胞への分化に関わる因子の探索に関しては、新たなCas9発現法が必要であると考えられ、CRISRP-iの応用、デグロンタグを用いた条件的発現システムの構築を、安定的発現遺伝子座において試みる。
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Causes of Carryover |
令和元年度の研究実施が一部遅延しており、令和元年度に計画した研究を令和2年度に実施する必要がある。そこで、令和元年度予定の使用額の一部を令和2年度に使用するものとした。令和2年度には、令和元年度分と合わせ、当初予定した研究計画を実施する予定である。
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Research Products
(4 results)