2019 Fiscal Year Research-status Report
RNA結合タンパクMSI2の限定分解によるがん幹細胞の運命制御機構
Project/Area Number |
17K20148
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 貴浩 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授
|
Project Period (FY) |
2019 – 2021
|
Keywords | 白血病 / がん幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、幹細胞の運命制御に与る分子機構を明らかにすることである。幹細胞は、多分化能を保持しながら増殖できる自己複製能を持つ特殊な細胞で、成体においては常に成熟細胞を供給することで組織恒常性の維持に寄与する。一方、腫瘍組織にも自己複製能、分化能の異なる複数種のがん細胞が存在し、正常組織に類似した階層性を持つことが明らかにされた。特に、自己複製能を持つ「がん幹細胞」は、治療抵抗性や病期進行、転移、再発に必須であり、有効な治療標的である。すなわち、幹細胞性を支える分子機構の理解は健常組織とがんの生物学の双方において重要であり、研究代表者は白血病のがん幹細胞を対象とした研究からその解明を目指している。私たちはある種の細胞内アミノ酸代謝酵素や細胞運命制御因子が白血病幹細胞の維持に必須であること、また両因子の発現がRNA結合タンパクMSI2によって制御されることを明らかにした。本研究ではこのRNA結合タンパクの分解が幹細胞機能の制御にどう関与するかを解明する。これまでに、MSI2の限定分解部位を質量分析法により決定した。また、限定分解の必要性を知るため部位特異的変異導入法によって複数の変異体タンパクを作成しその機能を検討中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の初年度前半は、米国の前所属機関から京都大学への移転と適切な研究環境の整備を目指しこれを達成した。研究開始後は当初の計画通り、限定分解を受けるMSI2タンパク部位を決定することに成功した。2つの異なる質量分析法を用いたが、いずれの方法でも同一部位を同定できた。その後、この結果に基づく変異体の作成とその生物学的活性の解析を行う実験系の構築についても順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
マウス個体を用いた解析が可能になるよう動物実験計画等の整備を行うとともに、当初の計画に従って解析を進めていく。
|
Causes of Carryover |
345千円程度の繰り越し・次年度使用が生じたが、これは主に人材雇用の若干の遅れによるものである。次年度の物品費(試薬類)の購入に充当する計画である。
|
Research Products
(8 results)