2019 Fiscal Year Research-status Report
ロボティクス・ハプティクス技術を用いたヒトの身体所有感操作とコグネティクス研究
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17KK0003
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
原 正之 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (00596497)
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Project Period (FY) |
2018 – 2020
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Keywords | コグネティクス / ロボティクス / ハプティクス / バーチャルリアリティ / 認知神経科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は,ジュネーブにある海外共同研究者の所属機関(スイス連邦工科大学ローザンヌ校)に12月まで滞在し,現地の認知神経科学者とともにコグネティクスに関わる国際的かつ学際的共同研究を主として推進した.
具体的には,現地の認知神経科学研究者とともにPresence Hallucination(PH:誰もいない空間で背後に「誰かの存在」を感じる錯覚体験)に関わる心理学行動実験および認知神経科学研究を共同で実施した.基課題において申請者が開発したPH実験システムを用いて,実環境とMRI環境の両方で健常者に対して疑似的にPHを体験させる実験を行い,PH条件と非PH条件での脳活動の違いを明らかにした.またPHを報告するパーキンソン病患者でも同様の実験を行い,PH発生に関わる脳機能・神経基盤をある程度特定することに成功した.これらの成果は,現在インパクトの高い国際学術雑誌に国際共著論文として投稿している.また在外研究中に現地の博士課程学生の指導も行っており,PHを発生させる新しい実験システムの開発も行った.従来のPH実験システムで用いるスレーブロボットの代わりに,ソレノイドによる接触刺激を導入することでウェアラブル化することに成功し,その成果を国際会議で発表している.これついても,現在フォローアップ実験を行っているところで,追加のデータが取得でき次第,工学系の国際学術雑誌に投稿することを画策している.
また国内では,スイスからオンラインで国内共同研究者をサポートしつつ,申請者が基課題推進中に作製したMRI内で使用可能な触刺激提示装置を用いた認知神経科学実験を共同研究者が実施した.この実験により,触刺激と感情惹起との関係についての新たな知見が得られ,その成果は国際学術雑誌に共同研究成果として公表している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は,海外共同研究者の研究室があるジュネーブに12月まで滞在して,現地の認知神経科学研究者とともに直接議論をしながら本研究課題を推進した.2018年度までに実験システムの構築・準備を終えていたため,本年度はその実験システムを実際に用いて心理学行動実験および認知神経科学実験を実施することに主眼を置いた.これらの実験において,海外共同研究者は実験の進行・管理を行い,申請者はオペレータとして実際に実験システムの操作・制御を行った.さらに,実験終了後にはシステムのメンテナンスや改良を行い,実験結果についての議論を学際的に行うことで,これまでにないスピードで研究成果を輩出することに成功した.これらの成果で,現在いくつかの国際学術雑誌に共著論文を投稿している.また,在外研究中に現地の博士課程の学生を指導する機会があり,PHに関する新しいプロジェクトの立上げも行った.これまでに,ウェアラブルの実験システムを新たに開発し,PHを始めとする身体錯覚研究に対する有効性を実証している.これにより,指導した学生はロボット分野におけるトップレベルの国際会議で成果発表を行っており,現在はそのフォローアップ実験について引き続きオンラインで議論・指導を行っている.国内でも,基課題推進中に開発したMRI対応触刺激提示装置を用いた認知神経科学実験により,コグネティクス研究を推進する研究者とともに共著論文を公表できたことから,本研究課題は研究計画に沿って概ね順調に進んでいるものと言える.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は,引き続き海外共同研究者とともにPHや身体錯覚に関わる研究を学際的に推進していく.具体的には,海外共同研究者の所属機関に数回ほど短期で滞在し,現在推進中のプロジェクトの加速・発展を促すとともに,新規プロジェクトの立上げを考えていたが,コロナウイルスの影響で2020年度の海外渡航は非常に困難であると考えらえる.そこで,オンラインでの国際共同研究推進に切り替えることを考える.例えば,SkypeやZoomなどを利用して海外共同研究者の所属機関で実施されるPH実験に参加する,現地の博士課程学生の指導をする,ラボミーティングに参加する,などを頻繁にオンラインで行い,これまでと同じクオリティで国際共同研究を推進することを試みる.また,これまでに得られた実験結果をまとめて論文化し,国際共著論文数を増やすことを目指す.新しい試みとしては,例えば触力覚介入により複数人で同じPHを体験させることやMRI環境で前庭感覚を混乱させることなどを議論しており,今後数年に渡って続けられる国際プロジェクトを新たにいくつか立ち上げることを行う.具体的には,これまでの議論を基礎として日本国内で試作実験システムを開発して海外共同研究者の所属機関に郵送し,現地の認知神経科学研究者とともにオンラインで実験システムの立上げを行う.さらに,可能であれば本年度中にパイロット実験を行い,開発したシステムの有効性を確認する.
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Research Products
(3 results)