2019 Fiscal Year Research-status Report
高安全な移動支援機器のための人間と機械の相互インターフェース技術に関する研究
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17KK0006
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
中嶋 秀朗 和歌山大学, システム工学部, 教授 (30424071)
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Project Period (FY) |
2018 – 2020
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Keywords | パーソナルモビリティ / 電動車いす / 生体信号 / 安全性 |
Outline of Annual Research Achievements |
足の不自由な障害者,高齢者なども含めて誰もが気軽に乗れる徒歩移動圏での新しい乗り物(パーソナルモビリティビークル,以下PMV)の必要性が増している.そのようなPMVに求められる機能は,徒歩移動圏に存在する段差や傾斜などへの対応と,移動の大半を占める舗装路面上でのエネルギ効率と高速性能の高さである.さらに安全性を高めるために,PMVと搭乗者との連携が求められるだろう.具体的には,PMVから搭乗者への周囲状況や機体情報の提供とその対応,そして,搭乗者からPMVへの伝達である.上記のようなPMVを実現するために,本年度は以下の4つのことを実施した. ①PMV自体の移動性能の向上:PMVの移動能力が高いことが前提となるため,数段の段差までだった従来の移動能力を,連続的な段差にも対応できる移動アルゴリズムへと拡張した. ②生体信号計測の基礎技術の把握:搭乗者の生体信号をPMVの安全性向上に活用できるかどうかという観点で,利用可能な生体信号の種類,性質やその取得方法について知見を深めている. ③周囲環境計測システムの基礎構築:PMVが搭乗者へ情報提供できるために,PMVが3Dカメラを用いて周囲の路面環境を認識するシステムの基礎部分を開発している. ④共同研究先との事前交渉と準備:PMVの安全性向上のためにPMVと生体信号情報を融合したシステムにできるかという観点で議論を継続している.共同研究の相手は,世界最先端レベルの知見が集積しているETH ZurichのSensory-Motor Systems Lab.である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①PMV自体の移動性能の向上:本研究では,PMVの移動能力が高いことが前提となる.そのため,四車輪型でありながら連続的な段差を移動できる移動制御アルゴリズムの開発を行った.具体的には,四足動物の歩き方の一つであるペース歩容をベースにして,重心移動を活用して安定性を保ちながら,歩くように移動する.実機での検証実験も十分に行い,成果を学術論文にまとめ,投稿した.また,特許も出願した.さらに,PMVの安全性向上の一機能として動作の途中中断方法の検討も行い成果を学術論文にまとめた. ②生体信号計測の基礎技術の把握:搭乗者の生体信号をPMVの安全性向上のために使うためには,即応性と確実性が重要である.調査を進めた結果,そのような観点から現実的に使えそうな生体信号は限られることが分かった. ③周囲環境計測システムの基礎構築:IntelのRealSenseを用いて点群データを取得し,周囲の路面環境を構築するElevation map (Autonomous Systems Lab & Robotic Systems Lab, ETHが開発)を活用し,我々のPMVとの統合システムを開発中である. ④共同研究先との事前交渉と準備:ETHのSensory-Motor Systems Labでは,Wearable robotやrehabilitation robotなど継続的に研究している.それらの知見から,PMVの安全性向上のためにPMVと生体信号情報を融合したシステムが有効かどうかという観点で議論を継続している.2020年3月から2021年3月までが共同研究のための渡航期間であり,渡航先での研究環境を構築するための準備や交渉も行った.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度が共同研究先での研究の主要な期間となる.搭乗者の生体信号を活用した高い安全性を持つPMVシステムの実現性を見極めるために,共同研究先の研究レベルや技術を吸収し,関連する知見を深めることを主眼として研究を推進する.ただし,コロナウイルスの影響で世界的に通常の研究活動が制限されている環境のため,状況に応じて研究内容や推進方法を見直していく. ・ETHのSensory-Motor Systems Labが行っているSports engineering,Wearable robot,Rehabilitation robotやSomnomatグループと議論を交わし,生体信号技術の可能性を把握し,生体信号活用技術を獲得する. ・PMV自体の移動性能の向上は大前提であるため,引き続き行う.2020年度は,実際に障害者が搭乗して競い合うサイバスロン2020に参加し,開発したPMVの移動性能評価を行う予定である. ・PMVの安全を管理するシステムのコンセプトの構築を開始する.これは搭乗者の状態やPMVの周囲環境計測情報を用いて,PMVの安全性を高める全体システムである.このシステムに,搭乗者の状態や周囲計測情報が取り込まれ,処理された上で,必要であればこの安全システムがPMVを緊急停止させる,などとなる.
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Research Products
(9 results)