2019 Fiscal Year Research-status Report
4D data analysis and simulation study on the relationship between extracellular signaling and morphogenesis
Project/Area Number |
17KK0007
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
石本 志高 秋田県立大学, システム科学技術学部, 教授 (30391858)
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Project Period (FY) |
2018 – 2020
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Keywords | コンピュータシミュレーション / 細胞・組織・器官 / 生体情報 / データ解析 / 発生・分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、基課題「一細胞の複雑な形状に基づく器官・組織動力学モデルのシミュレーション研究」において進展させた方向性、すなわち、ハエ発生過程における細胞外シグナル伝達と生体組織の分化・成長メカニズムの解明を目指し、発展研究を行った。具体的には、キイロショウジョウバエの蛹期翅上皮の細胞核および膜や、上皮組織の細胞接着分子であるカドヘリンの蛍光染色を高速共焦点顕微鏡や多光子顕微鏡を用いたライブイメージングで可視化およびデータ化し、定量化に最適な実験条件の洗い出しを実験家らとともに進め、それらで取得される一次画像データに関してのプログラム開発を行った。一次画像には、試料に起因するエラー、用いる機器に固有のエラー、デジタル処理の手順で発生するエラー等があり、これらを勘案せず一般的な画像処理を行うと元々画像が持っている定量性(物質の発現量に応じた輝度値)が損なわれてしまう。これらを逐一精査しつつ画像処理で定量性を一定程度保ったまま精細化するプログラムの開発を行った。また、翅上皮組織の周りには他の器官がひしめき、翅内部にも他種の細胞が混在するため、これらを自動認識・排他処理し、時空間スケールによってゆらぐ発現量を表す蛍光画像データの正規化手法の開発等を行った。 また、得られたデータ及び関連する生物学的知見に関して共同研究者らと議論を重ね、基課題において開発中の泡・頂点モデルシミュレーションに反映させつつ、新規計算機実験の改良を行い、実行した。具体的には周期的ひずみ入力に対する応力応答をみるシステムを改良し、実行した。これらに関する結果に関し、国際会議にて口頭発表した。 尚、上記2件は基課題(課題番号17K00410)での業績を含む研究実績である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通りヘルシンキ大学にて、昨年度に引き続き各種生体情報に対する実験条件および取得データの品質検証を行った。当該施設で新規導入された高速共焦点顕微鏡、ライトシート共焦点顕微鏡、多光子顕微鏡それぞれに、画像データの特性解析、ライブイメージングデータ取得のための設定条件、蛍光タグおよび得られる情報の検討を行った。これらと並行して実験デザインの検討を共同研究者である新見氏と行いつつ、それぞれの実験設定に対して高品質化画像処理プログラムの開発およびライブイメージングデータ画像処理プログラムの開発を行った。代表者によるプログラム開発量が昨年同様多めではあったが、問題なく遂行された。また、懸案のひとつであった解析システム構築に係る開発要員を確保し、高精度データ化および開発プログラムに対する高精度インプットデータ生成の一部を担うものとするべく、養成を行った。さらに、密に詰まった細胞核の動態を追跡する手法として機械学習を用いた解析プログラムに関する研究を継続し、論文集にて出版した。 本課題定量化の最終過程である、細胞形状のトラッキングおよびそれに基づく応力分布の推量、さらに別途開発している多細胞動態数理モデルとのデータ同化に関する予備研究を進めた。これらに関する理論的可能性や上記プログラム開発に関する理論的な問題点などに関して、共同研究者のマーク氏と議論を重ねた。
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Strategy for Future Research Activity |
計画時に想定していたより、多くの可視化機器が利用可能となったため、研究開発に かかる工程が多くなってきたが、開発要員の確保と養成も進んだため、当初計画で後半部分に想定していた通り、実験の実施、一時データ処理、4Dデータ解析システムの高精度化を継続して行う。当該年度末に新型コロナ蔓延による障害が発生してしまったため、キャンパス利用再開後に実験の設定を再起動する手間も追加で発生するが、前年度の進捗により今後の進捗への影響は少なく、本課題の目的は遂行可能であると考えている。 ショウジョウバエ翅発生過程における細胞外シグナル伝達と生体組織の形態形成・分化・成長メカニズムの解明に向けて、細胞形状取得の3D高精度化および時系列化を大きくすすめる。具体的には、細胞形状トラッキングアルゴリズムを開発し、解析システムの最終プロセスに実装していく。トラッキングデータおよびその情報解析により力学量推定を行い、当初計画には詳述しなかった数理モデルとのデータ同化とシミュレーションによる再現を目標とする。シグナル伝達部分の4Dデータは十分取得できているため、上記推進方策により形態形成との関連をより明確にできると期待される。 理論的な側面である、上記トラッキングデータの作成手順およびその情報解析部分に関しては、理論研究の共同研究者と研究を進め、現在開発中のモデルの改良や新規多細胞動態モデルの開発を試みる。
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