2021 Fiscal Year Research-status Report
4D data analysis and simulation study on the relationship between extracellular signaling and morphogenesis
Project/Area Number |
17KK0007
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
石本 志高 秋田県立大学, システム科学技術学部, 教授 (30391858)
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Project Period (FY) |
2018 – 2022
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Keywords | コンピュータシミュレーション / 細胞・組織・器官 / 生体情報 / データ解析 / 発生・分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、基課題「一細胞の複雑な形状に基づく器官・組織動力学モデルのシミュレーション研究」において進展させた方向性、すなわち、ハエ発生過程における細胞外シグナル伝達と生体組織の分化・成長メカニズムの解明を目指し、発展研究を行った。具体的には、昨年度までに取得した一時データ、すなわちキイロショウジョウバエの蛹期翅上皮の細胞間接着タンパクであるカドヘリンの高速共焦点顕微鏡および多光子顕微鏡を用いたライブイメージングデータから細胞形状を抽出するプロトコルおよびプログラムを、他研究による機械学習の手法を援用し、改良を行った。抽出形状に大幅な向上が見られ、その結果を用いた細胞境界張力推定にも一定の進展が得られた。さらに、シミュレーションで作成したモデルデータを用いた推定法の検証を行い、得られた結果から推定法の改良を行った。これらを用いたモデルパラメータの推定、即ちデータ同化にも着手し、定性的だが良好な結果を得た。同時に、今後のデータ同化検証用に単軸伸長インシリコ実験のコードを作成しインシリコ粘弾性実験を行った。その他、当該年度に新規取得した一次データ、細胞骨格を構成するチューブリンの蛍光マーカーや、細胞分裂マーカーとなる中心体マーカーのライブイメージングデータに関して、ノイズ除去を目的としたプログラム開発および解析を進めた。 得られたデータ及び関連する生物学的知見に関して共同研究者らと議論を重ね、さらに、本研究事業において開発した細胞核移動の深層学習によるトラッキングに関し、若干の改良を施した。 これらに関する結果に関し、国際会議にて5件、国内会議にて3件、発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度はコロナ禍のため当初計画から大幅な変更を余儀なくされたが、20日程度の海外渡航および滞在を実施することができた。ただし渡航期間中はオミクロン株の流行に伴い、海外渡航先研究機関での新規測定実験の実施は不可能となったため、共同研究者との議論、渡航前に取得された新規データの解析、および理論研究の実施に注力した。 概要にある通り、一時データの処理および解析に大幅な向上が見られ、力の推定法にも一定の改良が施され、それらの結果を用いたデータ同化にも道筋がつけられた。これらは当初計画にはなかった発展といえる。当該年度に得られた一時データの解析を通じて、隣接する組織間の3次元的シグナル伝達の証拠が揃い始め、それに続く分化・成長メカニズムの解明に一定の寄与があった。これらの結果のさらなる解析を追加し、論文としてまとめる目途をたてることができた。また、具体的な解析手法の一部に機械学習を用いた他研究の手法を取り込むものとの比較検討を通じて、解析結果の改善を得ることができた。また、応力推定法、多細胞動態数理モデルとのデータ同化に関して進展を得、複数の研究発表を行うことができ、コロナ禍による中断時期を除いて、ほぼ当初予定通りの進捗状況となった。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度と同様に、コロナ禍の影響で渡航が困難な状況が暫く続くことが予想されるが、これまでに開発した手法や結果のブラッシュアップを行い、リモートで可能な範囲で共同研究者らと議論を重ねる。これらの成果をまとめ、学術論文に投稿する予定である。 機械学習を援用した4Dデータ解析システムの高精度化には、アノテーション付きの追加学習データが必要でありニューラルモデルの更新も考慮すべき点のため、これらの準備を行い、高精度化を進める。当初予定には明記していない成果として高精度なデータ同化およびインシリコ再現実験、またそれに基づいた新規インシリコ実験を実施、発表する。上記推進方策によりシグナル伝達と形態形成の関連をより明確にできると期待される。 理論的な側面である、上記トラッキングデータの作成手順およびその情報解析部分、また応力推定法とデータ同化手法に関しては、理論研究の共同研究者や関連研究者との議論を進め、推定法の確立と新規多細胞動態モデルの開発を試みる。
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