2018 Fiscal Year Research-status Report
A study of predictabiliy of marine ecosystem in the Arctic Ocean and its adjucent regions based on an ice-ocean coupled data assimilation system
Project/Area Number |
17KK0014
|
Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
中野渡 拓也 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 北海道区水産研究所, 主任研究員 (20400012)
|
Project Period (FY) |
2018 – 2020
|
Keywords | 北極海 / 海氷モデル / データ同化 / 短・中期予報 / 低気圧 / 海氷厚 / アンサンブルカルマンフィルター / 自由漂流 |
Outline of Annual Research Achievements |
極域海洋における基礎生産の予測可能性を評価する上で、海氷などの物理環境の予測精度を明らかにすることは重要な課題である。今年度は、夏季でも多くの海氷が残存する東シベリア海に着目し、北極海の海氷予測同化システム(TOPAZ4)の海氷予報情報に基づいて海氷厚分布の短・中期(1週間程度)の予測可能性を調べた。その結果、海氷予測の精度は夏季に低下することが分かった。特に、この時期の海氷厚分布の予測精度は3日目までは高いものの、4日目以降に著しく低下することがわかった。このような予測精度の急峻な低下の原因を調べた結果、海上風による力学的な漂流プロセスの誤差が大きく関与していることがわかった。この4日目の大気の予測誤差は、東シベリア海上の移動性低気圧の形成と関係していた。これらの研究結果より、海氷の短・中期の予測精度の向上には、大気の予測精度の向上が必要不可欠であることがわかった。これらの研究成果は欧州の国際学術雑誌The Cryosphereに2018年6月に受理された。 さらに、過去3年間のTOPAZ4の海氷データ解析から示唆された大気の予報精度の重要性を確かめるために、各国の気象予報機関から提供されている大気予報データを用いたアンサンブル海氷予測実験を実施した。その結果、低気圧が発達する時期を境に各アンサンブルメンバーによる海氷予測の精度が著しく低下することが確かめられた。また、アンサンブル海氷予測のスプレッド情報から予報誤差の時空間分布特性を推定した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、TOPAZ4を用いた夏季北極海における海氷厚分布の定量評価、及び短・中期の予測可能性に関する研究成果を論文として取りまとめ、欧州の国際学術雑誌The Cryosphereに2018年6月に受理された。この研究成果は所属機関においてプレスリリースされ、国内の科学研究メディア(サイエンスポータル)でも紹介された。 また、2018年7月より約6か月の間、ノルウェーのナンセン環境リモートセンシング研究センター(NERSC)に滞在し、共同研究者のLaurent Bertino氏の協力のもとで、海氷データ同化システム(TOPAZ4)の海氷海洋結合モデル(HYCOM)とそのデータ同化システムであるアンサンブルカルマンフィルター(EnKF)に関する技術を習得した。また、TOPAZ4を用いて、各国の気象予報現業機関から提供されている大気のアンサンブル予報データ(TIGGEデータ)を用いた北極海の海氷予報実験を実施した。このTIGGEデータの解像度は0.5度で比較的荒いものの、TOPAZ4による現業の海氷予測の結果と概ね同程度の結果を得ることが出来たため、来年度以降に実施する予定の基礎生産量の予測可能性を評価するための整ったといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は、北極海における植物プランクトンの予測可能性を評価するために、今年度習得したTOPAZ4に低次生態系モデルを結合したものを使用して、2週間先までの予測実験を実施する。低次生態系モデルの習得と数値シミュレーションの実施のためのコードの書き換えや実験設定などについて議論するために、来年度もナンセンセンターで1か月程度滞在する。この実験では、海氷融解に伴う光環境の改善と融解水による栄養塩制限の影響を調べるために、2016年の海氷融解期に起こった北極低気圧の発達イベントの事例に着目した予報実験を実施する。また、北極海の基礎生産量の再現性を評価するために、比較対象に用いる現場観測データや衛星のクロロフィル画像データの整備と解析に着手する。 昨年度はTOPAZ4システムを用いた数値実験を実施することはできたが、国内の大型計算機への移植作業は、リプレイス時期が重なったことなどの理由から、予定通り進めることが出来なかった。今年度はノルウェーでの研究期間が終了後、速やかに国内の大型計算機への移植作業を進める。
|
Research Products
(2 results)