2021 Fiscal Year Annual Research Report
A study of predictabiliy of marine ecosystem in the Arctic Ocean and its adjucent regions based on an ice-ocean coupled data assimilation system
Project/Area Number |
17KK0014
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
中野渡 拓也 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産資源研究所(釧路), 主任研究員 (20400012)
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Project Period (FY) |
2018 – 2021
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Keywords | 北極海 / 海氷 / 北極低気圧 / 低次生態系モデル / 予測可能性 / 北太平洋 / 基礎生産量 / 長期変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
北極海における海氷融解期の基礎生産量の予測誤差を規定するメカニズムの要因分析の妥当性を確かめるために、2018年7月にラプテフ海で発生した北極低気圧(AC)の事例に対して、現業気象予報データと海洋低次生態系モデル(ECOSMO-II)を用いた2週間予測実験を実施した。その結果、2017年のボーフォート海の場合と同様にACの発生が予測できるケースでは、氷縁に沿って基礎生産量が著しく増加することを確かめた。また、基礎生産量の予測誤差も、ACの発生が予測できないケースの方が著しく増加することが明らかになった。基礎生産量が増加している海域では、表層の硝酸塩濃度が増加しており、氷縁域が後退していた。表層の栄養塩濃度の増加は、下層における栄養塩濃度の減少を伴っていることから、エクマン吹送流による鉛直混合過程が影響していることが考えられる。これらの研究成果は国内の学会において公表した。また、海氷海洋結合データ同化システム(TOPAZ4)を用いたアンサンブル海氷・海況予報実験の結果を学術論文として取り纏めた。 北太平洋亜寒帯域における基礎生産量の長期変動やその要因について、昨年度実施した北太平洋渦解像海氷・海洋結合低次生態系モデルを用いた過去37年間(1980-2016年)の過去再現実験データの分析を進め、オホーツク海における春季ブルームの早期化と海氷融解との関係性に加えて、北太平洋亜寒帯域における春季ブルームの遅延化の可能性を示唆する結果を得た。特に、後者については、亜熱帯循環系の水塊輸送量の増加に伴う光環境の悪化と溶存鉄濃度の減少が大きな影響を持つことが明らかになった。これらの解析結果は、海洋の基礎生産量の将来予測において、地球温暖化に伴う海氷融解や海洋成層化による鉛直的な栄養塩輸送の減少だけでなく、風成循環に伴う水平的な熱・塩・栄養塩輸送の変動も考慮する必要があることを示唆する 。
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