2018 Fiscal Year Research-status Report
冷戦下東アジアにおける都市の対立と依存に関する歴史研究―平壌とソウルの空間変容史
Project/Area Number |
17KK0024
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
谷川 竜一 金沢大学, 新学術創成研究機構, 助教 (10396913)
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Project Period (FY) |
2018 – 2019
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Keywords | 冷戦 / 北朝鮮 / 植民地 / 開発援助 / 戦後賠償 / 都市基盤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本国際共同研究では、冷戦下の平壌とソウルが対立を前提とする依存関係のもとで都市空間を変容させてきたと捉え、その相関メカニズムを建築・都市史研究として解析している。 研究手法としては、漢陽大学建築学部の韓東洙教授らとともに共同研究体制を敷き、研究の打ち合わせ、共同踏査、資料の共有などを頻繁に行いながら進めることができた。研究の観点として、両都市の都市空間構造、国際政治・経済的背景の差異、両都市の歴史的な空間形成に対する日本の関与、独立後の象徴的建造物の建設技法などに注目しており、本研究前半期においては以下のような研究活動を行った。 ソウルに関しては、1960年代の都市計画資料、地下鉄や高速道路関連の資料を収集することができた。平壌に関しては、都市の空間構造分析などを試みた。また、平壌の都市復興を担った建築家らの育成や彼らの担当部署などに関しても、資料などをベースに分析を進めることができた。さらに、新たに植民地期のソウル・平壌に関する資料も発掘するとともに、ソウルに残る植民地時代の住宅などについてもくり返し踏査を行った。これらの作業のなかでは、主に解放以前の両都市の都市基盤構造の比較分析を最も進めることができた。 また、本研究では都市空間の歴史的な比較を行う際に、都市基盤施設(インフラ)の形成やそれにともなう都市生活の質的変化を重視した包括的アプローチをとっている。前者の都市基盤施設に関しては東アジア全体での歴史的な位置づけを整理し、国際学会で発表できた。後者の都市生活の変容などに関しては、国際共同研究の強みを活かし、漢陽大や高麗大の研究者らから細やかなアドバイスや情報を得ながら分析を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年10月半ばより漢陽大学に滞在し、研究環境としては順調に共同研究をすすめることができている。ただし、そのなかで主要な共同研究者の一人の所属先が急遽変わるなど、予測できない事態もあり、そうしたなかで若干の軌道修正を迫られた。そのため研究の計画をやや変更し、研究対象建造物やプロジェクトに関する日韓の関係者の発掘など、現地ネットワークを活かした複雑な調査を後半に回し、資料発掘や現地踏査中心の調査を先んじて行うことで柔軟に対応し、研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究を進めるなかで、冷戦都市研究が、学問的なフロンティアとして広大な広がりを持っていることを実感している。ソウルと平壌の都市比較分析はそのなかの一つであり、それを最大限学術的な意義をもって削り出すには、同時に冷戦世界全体の都市史の総体的な把握もまた必要となる。こうした部分で、研究の対象範囲の選択と集中に迫られており、ここまではソウルでしか手に入れられないようなソウルと平壌両都市の資料(例えば各航空写真や都市の細かな地域資料など)の収集に力を注いできた。そしてその際、本国際共同研究の枠組を活かした共同研究者との協働やアドバイスが、非常に有効であった。 今後は前半に収集した資料の分析を行うとともに、主要な建造物の実地踏査やより踏み込んだ調査を進める。両都市の都市空間構造に関しては獲得した航空写真や都市計画資料の分析、国際政治・経済的背景の差異に関しては夏期に旧東側諸国への踏査・資料収集調査を計画している。また、象徴的建造物の建設技法に関しては、本研究前半期に収集したソウル各地域の資料などの分析を進め、実地踏査を1ヶ月に2~3度計画している。いずれも共同研究者と最大限協力しあい、当初の計画通りに可能な限り沿いながら内容を進めようと考えている。
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Research Products
(2 results)