2018 Fiscal Year Research-status Report
Comparative studies on gender-based local knowledge in modern Africa
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17KK0025
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
金子 守恵 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 准教授 (10402752)
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Project Period (FY) |
2017 – 2019
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Keywords | アフリカ / 技術 / ジェンダー / 生業 / 比較 / ものつくり / 実践 / 身体 |
Outline of Annual Research Achievements |
この共同研究は、現代アフリカにおけるジェンダーの違いに留意しながら、急速な市場経済化や観光開発に晒されているエチオピア西南部で多層的な社会状況を生きる人びとが「もの」を創りだす実践を扱う。次年度(2018年度)は、以下の2つの研究活動(1. 共同現地調査、2. 学術交流・成果発信)にそって研究をすすめた。 1. 共同現地調査:2018年10月中旬から11月上旬にかけて、代表者と共同研究者のフィールド(農耕民アリ[女性職人が暮らすコミュニティ]、農耕民ドルゼ[男性織師が暮らすコミュニティ]、農牧民ハマル[新技術を受容した女性コミュニティ]、農牧民アルシ[新生業を確立したコミュニティ]を相互訪問し、新たな生業活動の確立とジェンダーを基盤にした知の実践や新技術の受容とジェンダーを基盤にした知の獲得という点において比較検討する可能性について議論をすすめた。 2. 学術交流・成果発信:2018年4月に開催された国内学術大会(日本ナイル・エチオピア学会第27回学術大会)において、ものの生成から廃棄までのプロセスに人が関与する行動やその基盤となる知について着目し、社会的な性差を基盤にした知がそのプロセスに影響を与えている点について報告した。2018年10月に開催された国際エチオピア学会では、ジェンダーを基盤にした知に関わる研究動向について、参加者と議論することができた。学会参加後、共同研究者や彼らの指導学生、カウンターパート部局の若手研究者とセミナーを開催し、エチオピアにおける生業活動とジェンダーを基盤にした知との関わりについて情報共有した。さらには、2018年12月にフランスにおいて開催された国際シンポジウムにおいて、エチオピアにおける開発実践と生業活動における新たな知(創造的な知)の生成について問題提起し、アフリカの諸地域における新たな生業活動の生成について参加者と議論を重ねた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次年度は、共同研究者(Getaneh Mehari博士、Mamo Hebo博士、Samuel Tafera博士)とともに互いの調査地域を相互訪問し、それにより当初比較研究の起点として念頭に置いていた課題のうち少なくとも下記の課題について、実施可能性をより具体的に議論することができた。 「課題:ジェンダーを基盤にした創造的実践知と技術の継承」について、モーションキャプチャという手法によってデータ収集し比較検討する点については、身体動作に関わるデータをある程度収集することは可能であるものの、異なる生業間に見出される動作の中のどの部分を比較の要素として抽出するか、という点についてはより綿密な議論とより精緻なデータ収集の方法をつめていく必要性があることを現時点では共有した。 「課題:新たな生業活動の確立とジェンダーを基盤にした知の実践」や「課題:新技術の受容とジェンダーを基盤にした知の獲得」については、行政やNGOなどの外部アクターによって新たな生業活動が生成し、それによってジェンダーを基盤にした知の実践についてさまざまな変化が生じていることも散見された。これについては継続して分析検討していく。 学術交流や成果発信については、国際学会・シンポジウム、国内学会を介して、日本国内にとどまらず、エチオピアやフランスにおいてジェンダーを基盤にした知識と新たな生業活動について問題提起をおこない議論を深めることができた。このような経緯により、本共同研究は、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に向けて、調査地域の相互訪問をおこないつつも、学術交流と成果発信により力を入れて共同研究を進める。学術交流に関しては、引き続き共同研究者の所属機関との連携をはかりつつ研究を進めることに加えて、2019年4月下旬にエチオピア・アジスアベバ大学内に開設された京都大学アフリカオフィスを拠点にしながら、共同研究者やその所属機関の研究者との学術交流をより深化させていくだけではなく、アジスアベバ大学のさまざまな部局の研究者やエチオピアを訪問する欧米の研究者との交流やネットワーク作りを行うことも、この共同研究を推進していく方策の一つと考えている。 また、初年度に学術的な交流を深めたオランダ、ライデン大学アフリカ研究センターの研究者とも連携しながら、京都において本共同研究の成果を発信する集まりを組織し、その成果を英文雑誌上で発信していくことも、この共同研究を推進していく上で重要な方策であると考えている。これによって、京都(日本)ーアフリカー欧米という3つの地点を結ぶ共同研究の可能性を開くことできる。さらには、京都をはじめとした国内の若手研究者も巻き込んで、ジェンダーを基盤にした知識やそれに関わるマテリアリティの課題について関心をもってもらうことができると考えている。
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Research Products
(4 results)