2022 Fiscal Year Annual Research Report
Ageing and Illness in British and Japanese Children's Picturebooks 1950-2000: Historical and Cross-Cultural Perspectives
Project/Area Number |
17KK0030
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
迫 桂 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 教授 (60548262)
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Project Period (FY) |
2018 – 2022
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Keywords | ageing / picturebooks / children's literature / life course / Japan / UK |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は大きく二つの要素からなる。一つは、題目にある絵本の比較研究で、基課題で計画された内容の一部を発展させることを目的とする。もう一つは、同テーマ(ageing and illness)をより広い文脈(地域、ジャンル、メディア)で探求するものである。これらの研究活動及び研究連携関係構築を通し、基課題全体の発展を目指す。 本年度は現代社会が直面する環境問題に、世代間関係を描いた児童絵本がどう貢献しうるか、という問いを設定し、エイジング研究とエコロジー批評の視点から、日英の児童絵本を比較分析した。さらに、大人向けのSF小説を対象に、子どもと世代間関係の表象を分析し、現代社会における未来の想像を考察した。二つの研究成果をまとめた論文の出版が確定している。 研究期間全体を通じて遂行した日英児童絵本研究は、エイジング研究と児童文学研究を接合する先駆的研究となった。子どもについて考えることが、老い、さらに、ライフコースを理解する切り口になることを示す意義をもった。また、日本の作品とそれについての研究を国外に紹介することができた。 2019年には老い、病い、ケアをテーマに国際学会を開催し、その後、学会を基盤とした論文集(Contemporary Narratives of Ageing, Illness, Care)を出版した。論文集は、実践研究とテクスト分析研究の両方を含むだけでなく、多様な言語文化、ジャンル、媒体のテクスト(音楽、写真、映画、ドキュメンタリー、小説、児童絵本)を対象とした研究を収録している。これは、人文科学分野の老年学が、欧米・英語テクストの研究に偏重した現状を鑑みると、特に意義深い点である。COVID-19は、各国社会と世界のレベルにおいて、既存の社会経済制度や文化価値の見直しの契機となった。本書に収められた論考が、この流れに少しでも貢献することを期待する。
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Research Products
(3 results)