2019 Fiscal Year Research-status Report
Britain's Global Destruction of Inconvenient Records: The Role of the Colonial Office
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17KK0033
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
佐藤 尚平 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (70597939)
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Project Period (FY) |
2018 – 2020
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Keywords | イギリス帝国 / 植民地省 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のテーマは、20世紀の中葉から後半にかけて世界各地でイギリス帝国が行った植民地文書の大規模な隠蔽工作である。当初はごく一部の地域で行われた局地的な文書隠蔽工作が、なぜ帝国全土に拡大したのか。その過程で重要な役割を担ったのではないかと疑われる本国イギリスの植民地省に焦点を当てて、検討を進めている。 3年間の研究計画の2年目にあたる本年は、一次史料と二次史料の整理と検討を進め、さらに海外共同研究者をはじめイギリスやマルタの研究者らと密に連携して、来るべきイギリスでの長期海外調査に向けた準備を進めた(本年度末に渡航を開始する予定であったが、新型コロナウィルスの影響により延期)。こうした作業を通じて、本国イギリスの植民地省がイギリス帝国の文書工作に果たした役割を解明することがいかに重要であるかが再確認された。というのも、40近い植民地のうち、確認した限りほぼ全てにおいて、文書隠蔽工作が実施される前後に植民地省と連絡が取られているのである。植民地省からの指令に基づいて文書隠蔽が行われたのか。あるいは、ことはそれほど上意下達ではなく、むしろ植民地省は前例や蓄積されたノウハウを各植民地に情報伝達をするというハブ的な役割を演じていたのか。はたまた、世界各地で行われた文書隠蔽工作は、各植民地がその都度主導したものであり、本国の植民地省はそれを追認していたに過ぎないのか。こうした疑問を解明するためには、引き続き本格的に一次史料を検討する必要がある。 さらに本年は、上の実証的な作業を通じて得られた研究成果を、国内外に向けて出版物と学会報告を通じて発信した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度末、いよいよ長期海外調査を開始しようとした矢先、新型コロナウィルスによる影響で渡航を延期せざるを得なくなった。このことは非常に残念であるが、本年度全体を見渡した時には、渡航に向けた準備を十分に整えることが出来たので、おおむね順調に研究を進めることが出来たと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの影響がおさまり次第、渡航をして長期海外調査を開始する。それまでは、これまでに収集した一次史料・二次史料を整理・検討することで実証的な検証を進める。
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