2019 Fiscal Year Research-status Report
Archaeological studies on the production and distribution of the Khmer sotneware
Project/Area Number |
17KK0034
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
田畑 幸嗣 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (60513546)
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Project Period (FY) |
2018 – 2020
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Keywords | クメール陶器 / 黒褐釉陶 / 窯跡遺跡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は陶器窯の構造分析と消費地出土遺物の産地同定という二つの側面をから、クメール黒褐釉陶器の生産=流通システムの解明を目的とする。カンボジアで新たに発見された黒褐釉陶器窯を発掘し、長期滞在による出土遺物の徹底的な調査を実施することで、1)窯体構造に関する疑義解明とクメール黒褐釉陶器窯の窯体構造のモデルを明確にし、さらに2)消費地遺跡出土遺物の産地同定が計画されている。具体的な計画は次の通り。 【1】発掘調査に基づく遺構研究・・・新発見の窯跡発掘調査による窯体構造の確認と解析を行う。空撮や3D計測による構造解析、14C年代測定、燃料材の樹種同定などの自然科学分析も行い、これまでの疑義に答えるとともにクメール黒褐釉陶器窯の基本構造を確定する。 【2】窯跡・消費地出土遺物の型式学的研究と自然科学的分析・・・遺物の基礎整理・図化、データベース化を通じ、出土クメール黒褐釉陶器の形態および製陶技術を明らかにする。また、研究協力者に依頼し、窯跡出土遺物と消費地遺跡(寺院)出土遺物の蛍光X線分析を行う。消費地出土遺物は共同研究者から提供を受ける。 【3】生産=流通モデルの構築・・・これらの分析結果に基づき、消費地遺跡(寺院)出土遺物の産地同定を行い、どのような窯がどのような寺院へ製品を供給していたのか、クメール黒褐釉陶器の生産=流通体制を解明する。 2019年度は、2020年度に予定されている発掘調査にむけた予備調査年度と位置づけた。 昨年度に引き続き過去の窯後調査データをもとに3Dモデルを構築し、クメールの横炎式窯の基本構造を再解析した。さらに試掘をおこない、作成したモデルの検証をおこなった。また、出土遺物データベースを構築し、形式学的分析をすすめ、最終年のためのデータを整備した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
国際共同研究者との連携も順調であり、2020年度に予定されている現地調査のための基礎データも十分な量が集成できた。具体的には、発掘前の遺跡解析として、昨年度解析した点群データによるGISによる窯跡の非破壊調査をすすめ、南北軸で北に開口部をもつ単室窯の存在をほぼ特定するとともに、試掘調査も実施した。遺物については、これまでの図化、データベース化がをほぼ終了した。。 試掘調査の結果、3Dモデル解析で推定した場所に窯跡が存在することがあきらかになった。それだけでなく、軸線のことなる別の窯壁らしき遺構も検出でき、これまでにない新たな様態の窯の可能性がでてきた。 それだけなく、窯業では生じるはずのない鉱滓ないしは鍛冶滓と思われる資料も採集している。この資料については来年度以降の詳細な調査検討が必要であるが、もし本当に鉱滓ないしは鍛冶滓であり、その遺構が残存してるのならば、アンコール朝だけでなく、東南アジアではじめての複合生産遺跡を発見することになり、まったく新たな研究を可能にする。非常に重要な資料であり、当初の計画予定をこえる進展があったといってよいだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、次の4項目についての研究を推進する。しかし、新型コロナウイルスの影響で現地調査の目処がたっていないため、状況によっては、再来年度へ延長する可能もある。 【1】発掘調査に基づく遺構研究・・・新発見の窯跡発掘調査による窯体構造の確認と解析を行う。 14C年代測定、燃料材の樹種同定などの自然科学分析も行い、これまでの疑義に答えるとともにクメール黒褐釉陶器窯の基本構造を確定する。 【2】窯跡・消費地出土遺物の型式学的研究と自然科学的分析・・・クメール黒褐釉陶器の形態および製陶技術を明らかにする。 【3】生産=流通モデルの構築・・・これらの分析結果に基づき、消費地遺跡(寺院)出土遺物の産地同定を行い、どのような窯がどのような寺院へ製品を供給していたのか、クメール黒褐釉陶器の生産=流通体制を解明する。 【4】アンコール時代における複合生産遺跡の研究・・・本年度入手した資料に基づき、東南アジアではじめての複合生産遺跡であることが確実となれば、まったく新たな研究の地平が誕生する。そのため、窯体の調査と並行し、金属生産遺構の確認調査も実施する。
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