2021 Fiscal Year Research-status Report
Empirical Study of Interaction between Indigenous Traditional Knowledge and Modern Knowledge
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17KK0036
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
友永 雄吾 龍谷大学, 国際学部, 准教授 (60622058)
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Project Period (FY) |
2018 – 2022
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Keywords | オーストラリア先住民族 / 遺骨と副葬品の返還 / 遺骨と副葬品の再埋葬 / 遺骨と副葬品の再埋葬のための倫理 / 先住民族と非先住民族との共同研究 / オーストラリア先住民族とCOVID-19 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年にオーストラリア国立大学とメルボルン大学にて1年間の長期海外研究を予定していたが、新型コロナウィルス感染の世界的な拡大のため不可能となった。こうした予期せぬ状況下で、2020年から研究テーマをオーストラリア先住民族からアイヌ民族と琉球人の伝統知と近代知の相互作用に拡大し、オーストラリア先住民族との比較研究をすることにした。殊に、2021年度は所属機関での学内業務と教育に復帰した中、昨年に引き続き3つの研究を実施した。 ①先ず、北海道大学アイヌ・先住民研究センターの客員研究員として再度承認され、先住民族の遺骨返還の歴史とその現状について調査した。本研究の成果は、共著の1章として寄稿し法律文化社から2022年5月に出版が決定している。 ②次いで、学内の研究会、国際学会にてオーストラリア先住民族とCOVID-19、オーストラリア先住民族とデコロナイジング・エデュケーションをテーマに英語で発表をした。 ③更に、昨年に引き続きオーストラリアで刊行された難民当事者により執筆された単著と、オーストラリア先住民族当事者が執筆した単著を翻訳した。翻訳した2冊の洋書の内、後者の『ダーク・エミュー』が、オーストラリア大使館から資金援助を受けて明石書店から2022年5月に出版されることが決定した。 幸運なことに、本基金の再々延長が承認されたため、最終年度となる2022年度は、当初予定していたオーストラリア先住民族の伝統知と近代知の相互作用に関して現地調査を実施予定であるが、未だ研究のための長期渡豪ビザが取得困難である。このため、急遽①のテーマに絞り、先住民族の遺骨を植民地期に大量に収集した宗主国である英国にて、当該研究に従事することにした。受入機関はケンブリッジ大学アジア中東学部で、2022年9月1日~2023年2月28日まで客員研究員として受入れが許可されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
世界的に新型コロナウィルス感染が拡大しているため、当初計画していたオーストラリア国立大学とメルボルン大学を基盤とする現地での研究が1日も実施できなかった。こうした中、21年度もコロナウィルス感染拡大の収束が見られることがなく、復帰した所属機関の学内業務と教育にほとんどの時間を割かれた。 そこで2021年度に、オーストラリア国立大学の受入研究科と指導教官に、2022年度まで研究時期の延期と受入れ再許可を依頼し承認された。ただし、22年度もなお研究のための長期渡豪が困難である。このため、急遽、比較的渡航が可能な英国ケンブリッジ大学で研究を遂行することに変更した(22年度3月以降、コロナ対策の条件なく渡英可能)。また本務校からも2022年9月から6カ月間の研究を実施するための渡英の許可がおりた。更に本基金の再々延長が許可されたことで、本基金の規則にある6カ月以上の海外研究機関における研究に従事できる可能性が高くなった。 以上のように、研究テーマを絞り、渡航国と研究機関の変更や、所属機関での調整をする傍らで、所属機関や国際学会にて英語での発表をし、22年度5月に出版が決定している共著への1章の寄稿や、洋書の単訳を校了し、5月に出版することが決定した。 こうした状況下で、2022年度の前期は、本基金を有効活用できるよう、単訳と共訳の翻訳出版をし、6月中旬に決定している豪日交流基金から助成を受けて開催する国際学会でのパネルを成功させる。後期には、ケンブリッジ大学アジア中東学部を拠点とし、大学や博物館に所蔵されている先住民族の遺骨と副葬品の返還に関する伝統知と近代知の関係する調査を実施し、その成果を国内外の学会にて発表し、更には国際ジャーナルへ投稿する。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は教育と芸術に関する先住民族の伝統知と近代知との相互作用に研究の中心テーマを絞る。 前期は、2022年6月18日に豪日交流基金(AJF)助成企画として開催する『日豪の先住民族研究における「応答」(Call and Response of Indigenous Studies in Australia and Japan)』を成功させる。次いで2020年度から継続する『ダーク・エミュー アボリジナル・オーストラリアの「真実」』の単訳を5月までに、『山だけが友(仮題)』の共訳を8月までにそれぞれ出版する。 後期は、渡英してケンブリッジ大学アジア中東学部を拠点に9月から6ヵ月間の研究に従事する。具体的には、大学や博物館に所蔵されている先住民族の遺骨と副葬品の返還に関する伝統知と近代知の関係に調査を絞る。本テーマでは、2000年から英国からオーストラリア先住民族に1200体以上の遺骨と副葬品の返還がなされており、ケンブリッジ大学は当該問題に関して主要な役割を担う研究機関の1つである。殊に、ケンブリッジ大学や他研究機関が先住民族コミュニティと展開する共同研究や倫理規定について深く学ぶ。 これにより、これまでオーストラリア国内のみでの研究であった遺骨と副葬品の返還に関するテーマに、よりグローバルな視点が加わり、先住民族の伝統知と西欧の近代知の相互作用に関する研究をより普遍的なテーマへと押し広げることができる。さらに人的なネットワークも飛躍的に拡大することができる。 こうした成果は、国内外での学会発表や学術雑誌への投稿、2020年度から客員研究である北海道大学アイヌ・先住民研究センターの研究会などで発表することで、当該テーマが日本における問題でもあることを再確認することにもなり得る。そうした自省利他の観点を本研究では提示したい。
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Research Products
(6 results)