2022 Fiscal Year Research-status Report
Empirical Study of Interaction between Indigenous Traditional Knowledge and Modern Knowledge
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17KK0036
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
友永 雄吾 龍谷大学, 国際学部, 准教授 (60622058)
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Project Period (FY) |
2018 – 2023
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Keywords | 先住民族の遺骨に関する国際返還 / オーストラリア先住民の遺骨返還 / アイヌ民族の遺骨返還 / 琉球人の遺骨返還 / 博物館における先住民族資料の返還 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年6月にオーストラリア学会第33回全国大会にて“Call and Response of Indigenous Studies in Australia and Japan”と題するパネルを主催した。その結果は、11月に報告書として出版した。また7月、ブルース・パスコウ著、友永雄吾訳『ダーク・エミューアボリジナル・オーストラリアの「真実」』を出版し、本書出版記念の講演をオーストラリア大使館後援で実施した。本書に関してはオーストラリア多言語放送局(SBS)から受けたインタビューがネット上に公開されるとともに、雑誌『思想』、『図書新聞』などで4回書評が掲載された。 2022年9月からは半年間の長期外来研究員としてケンブリッジ大学アジア中東学部の外来研究員となり「オーストラリア先住民族の遺骨と副葬品の返還をめぐる研究」に従事した。9月から11月までは、研究倫理原則を解明するため、ケンブリッジ大学考古学及び人類学博物館、ダックワーク研究所、ロンドンにある大英博物館と自然史博物館、さらにはオックスフォード大学ピット・リバーズ博物館、バーミンガム市立博物館、リバプール市立博物館を訪問し、各機関のガイドラインや倫理規定について文献調査した。そこで、英国全土77の博物館に散在するオーストラリア先住民コレクション約39000中7割がピット・リバーズ(16906)、大英博物館(自然史博物館含む)(6527)、考古学・人類学博物館(3750)に収蔵されていることを知り、これら3博物館を中心に11月から2023年2月まで学芸員や研究者にインタビューを実施した。それらの中間報告は、ケンブリッジ大学先住民研究ディスカッション・グループ主催セミナーと京都大学主催の国際ワークショップにて発表した。また、2022年12月には『考えてみよう先住民族と法』に「第7章オーストラリア」を寄稿し出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度のコロナ感染拡大のため、予定していたオーストラリアでの先住民族の「教育」「芸術」「環境管理」に関する研究が実施できなくなり、テーマを先住民族の遺骨返還に変更した。このため20年度と21年度は文献資料による調査とオーストラリア先住民研究者により執筆された洋書の翻訳作業が中心となったが、22年度の後期に半年間英国ケンブリッジ大学アジア中東学部に外来研究員として在籍することで、研究を飛躍的に推し進めることが可能となった。特に、当該大学考古学・人類学博物館とダックワース研究所の博物館学芸員Trish Biers博士、オックスフォード大学ピット・リバーズ博物館の学芸員Marenka Thompson-Odlum氏、ロンドン自然史博物館の学芸員 Heather Bonney博士には、本研究に関する理解を示していただき、各機関の資料提供に加え、それぞれの経験にもとづく情報提供をしていただいた。殊に、Bonney博士は英国内の博物館学芸員のネットワークを形成しており、本ネットワークへ招待いただいた。また、ケンブリッジ大学の先住民研究ディスカッション・グループのコーディネーターであるBenny Q. Shen氏には、本グループのメンバーに加えていただき、先住民族の遺骨返還に関する発表の機会やその他学生や研究者と知己を得る機会を与えていただいた。オーストラリアとの関係では、20年度に受入れ教員としてお世話になった先住民研究者Tiriki Onus博士に所属大学とメルボルン大学の間で研究者と学生との交流を促進するプロジェクトのメンバーとなり23年1月から断続的に会合を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度は、英国においては①ケンブリッジ大学考古学・人類学博物館、オックスフォー大学ピット・リバーズ博物館、さらにロンドン自然史博物館を中心にこれまでに得た研究者や学芸員とのネットワークをさらに深めるべく、9月上旬にケンブリッジ大学にて日・豪・英の先住民族の遺骨返還に関するワークショップを開催予定である。さらに、②ケンブリッジ大学先住民研究ディスカッション・グループのネットワークを活用し、先住民族の遺骨返還に関する研究を展開する世界的に活躍する研究者との交流を図る。 8月中旬にオーストラリアに赴き、22年度に得た成果を、①メルボルン大学、モナッシュ大学、ディキン大学、ビクトリア大学を中心に活躍する知己の先住民研究者と共有する。加えて、②長年、遺骨返還問題に取り組んでこられた、Jim Barg氏に、現在のオーストラリアにおける遺骨返還の状況、23年5月8日にメルボルン博物館からアイヌ民族へ返還されたアイヌ民族の遺骨返還に関してインタビューをする。 論文や出版物の研究成果の発表に関しては、23年2月にアイヌ民族の遺骨返還に関する論文と琉球人遺骨返還に関する論文を国際学術雑誌であるJapan Forum とJournal of International Human Rightsにそれぞれ投稿し、現在、査読の結果待ちである、これら査読結果を受けて2本の論文が掲載されるよう尽力する。 最後に、20年度から翻訳作業を継続する、オーストラリアの移民政策に関して難民当事者の経験にもとづいて執筆された書籍"No Friend But the Mountains: Writing from Manus Prison"を出版する。
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