2019 Fiscal Year Research-status Report
障害者差別禁止法理の雇用及び福祉的就労への影響-日仏比較法研究
Project/Area Number |
17KK0052
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
永野 仁美 上智大学, 法学部, 教授 (60554459)
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Project Period (FY) |
2018 – 2020
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Keywords | 障害者雇用 / 福祉的就労 / 差別禁止 / 障害者雇用義務 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、ボルドー大学での在外研究を実施した。労働法・社会保障法等を専門とする同大学の研究者から多くの助言を得つつ、2018年にフランスで行われた障害者雇用義務制度の大きな改正(2020年1月施行)について調査すると同時に、差別禁止や合理的配慮義務を導入した2005年の法改正以降、フランスの障害者雇用・就労の現場がどのような変化を遂げてきたのか、現地でのインタビューを通じて調査を行った(インタビュー先には、AGEFIPH(障害者雇用納付金の管理運営機関)や適応企業、ESAT(福祉的就労の場)等が含まれている)。これらにより、フランスにおける障害者雇用・就労の現状の把握が可能となった。 また、日仏の比較法研究を進める観点から、「日仏における障害者の就労」と題するシンポジウムを2020年3月に開催すべく、ボルドー大学の同僚とともに準備を進めた。複数回にわたる打ち合わせを通じ、両国の障害者雇用・就労政策の相違点・類似点を洗い出すとともに、共通する課題について、研究者及び実務家間で意見交換を行う機会を作ることに努めた。シンポジウム自体は、コロナウィルスへの対応のため大学が閉鎖となったことから中止となったが、その準備作業において、ボルドー大学の研究者及びボルドーその他の地域の実務家と日仏に共通する障害者雇用・就労における課題等を検討することができたことは、日仏比較法研究を一層進め、さらには、今後の障害者雇用・就労に関する法制度に対する示唆を得るうえでも有意義であったと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
在外研究中は、ボルドー大学所属の労働法・社会保障法研究者から多くの助言を頂きつつ、フランスにおける障害者雇用・就労政策について、法制度・現場の双方の観点から研究を進めることができた。現地でしか行うことのできないインタビュー調査もボルドー及びパリにおいて数多く行うことができた。また、日仏比較法研究を進めるべく、「日仏における障害者の就労」に関するシンポジウムの開催に向けた準備も、ボルドー大学の研究者と共に進めることができた。これらの作業は、非常に順調に進めることができたと言える。 しかし、コロナウィルスへの対応のための大学閉鎖により、3月下旬に行う予定であった日仏シンポジウムは中止となってしまった。これにより、日仏の研究者及び障害者雇用に携わる実務家が集まり、両国における障害者雇用の課題や現状について意見交換を行う機会が失われることとなった。状況次第であるが、入念に打ち合わせを行い、レジュメのフランス語への翻訳なども行い準備を進めていたシンポジウムを開催する機会を近いうちに持ちたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
中止となった障害者雇用・就労に関する日仏シンポジウムについては、かなりの準備を進めていたことから、時期を見つつ、ボルドー大学の研究者やボルドーの障害者雇用・就労の現場の方々に協力を頂きながら、再度、開催に向けて調整を行いたいと考えている。 また、今後は、1年間の在外研究の成果をまとめ、公表する作業を進める予定である。1つめとして、フランスの学術雑誌(Revue de droit sanitaire et social)に日本の障害者政策(特に雇用・就労政策等の各政策の対象となる障害者の範囲)を紹介する論文を掲載する予定である。日仏シンポジウムの準備の過程で、両国における障害者の範囲の相違は、フランスの研究者にとって興味深いテーマであることが分かった。したがって、この点を明らかにする論文をまとめる予定である。また、2つめとして、フランスで2018年に行われた障害者雇用義務制度の改正に関する論文を日本の研究雑誌に掲載する予定である(詳細バージョンと、障害者雇用の実務に携わる方々への情報提供を兼ねた簡易バージョンの2つを公表予定である)。 この他、昨今、特に注目を集めている精神障害者の地域生活支援・就労支援について、フランスにおけるセクター制度も参照しつつ、研究を継続する予定である。
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Research Products
(3 results)