2019 Fiscal Year Research-status Report
Faith and Social Engagement of Muslim Women in Malaysia: Informatization, Identity and Agency
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17KK0057
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
安達 智史 近畿大学, 総合社会学部, 准教授 (90756826)
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Project Period (FY) |
2018 – 2020
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Keywords | ムスリム女性 / 信仰 / 社会参加 / マレーシア / ジェンダー意識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現代マレーシアの女性の信仰と社会参加のあり方を、情報化やその信仰実践に着目しながら探求するものである。本年度は、昨年度の在外研究における大学教員および学生を対象とした調査データの分析を中心に進めた。その分析の結果、マレーシアのジェンダー意識とそれが信仰といかなる関係にあるのかという点を明らかにした。マレーシアは、マレー系(=ムスリム)を中心とする多民族国家であるが、分析の結果は、民族の違いを超えて、ジェンダー意識をめぐる共通の認識の存在を示唆している。彼女/彼らは、女性を「感情的(emotional)」、男性を「理性的(rational)」という区別で認識しており、そのことから、前者ではなく後者を社会のリーダーとして認める傾向にあった。また、こうした考えは、男性よりも、(とりわけマレー系の)女性の間でよりはっきりと共有されていた。これは、一方で、イスラームの教えが既存のジェンダー関係を下支えするものとなっている点を示している。だが他方で、女性の社会参加についての男性の相対的な寛容さは、社会全体のジェンダー意識の変化を表すものである。また調査では、女性の「勤勉さ」や「コミュニカティブ」という特質が高く評価されていることから、近年発展しつつある新しいリーダーシップ論(ex.変革的リーダー)を踏まえると、マレー系(=ムスリム)女性が高い地位につくことを積極的に評価する余地が存在する点を垣間見ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の在外研究中に、計画された調査の多くを実施することができ、またその成果報告を実施できていることから、研究の遂行状況は概ね順調であるといえる。 ただし、本年度は、二つの理由から調査活動を思うように進めることができなかった。第一に、マレーシアでの受け入れ教員であり調査協力者であったマラヤ大学のRosila Hussain氏が夏から秋にかけて体調不良になり、夏の共同調査が実施困難となり、また秋の学会では、申請者が組織した部会で彼女の発表がキャンセルとなった。第二に、新型コロナウイルスが問題化したため、3月に予定していた現地調査もおこなうことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスが世界的な流行となっているため、本年度、現地調査を実施する見通しがつかない。そのため、二つの方策を考えている。 第一に、本年度は現地調査ではなく、先行研究の精査、既存のデータ分析、成果報告を中心に研究を進める。第二に、期間延長をおこない、来年度、新型コロナウイルスが落ち着きを見せたときに、現地調査をおこない、それまでの成果と合わせて最終的な報告をおこなう。
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Research Products
(12 results)