2019 Fiscal Year Research-status Report
Rethinking about legal approaches to Gift : Researches on French family law and charity law
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17KK0063
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 哲志 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (50401013)
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Project Period (FY) |
2018 – 2020
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Keywords | 贈与 / フランス法 / 家族財産 / 報償 / 遺留分 / 法人 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年9月より2020年3月まで在外研究に従事した(うち1ヶ月は別用務・別財源による。なお、アクセスの容易さからパリ第2大学への滞在期間を長く取ることとしたが、共同研究者の一人であるメキ教授は同大の連携研究者として施設使用権限を有しているため、定期的な意見交換にとってむしろ便宜であった)。 《課題① 家族内贈与の網羅的把握》については、公証人・研究者・弁護士を対象に面談調査を実施した。昨年度に得られた「贈与分割は相続人間の平等の砦である」との認識を確認する一方で、老親介護等の特別のサービスを担った/今後これを担う相続人への報償の方途を列挙してもらうこととした。ここでは詳述しないが、相続・恵与法の外のスキームが多くを占める。すると、持戻しや遺留分減殺をなど相続・恵与法がこれを把捉すべく動員され、サービス提供者が抗弁を構えるという関係となる。以上は、本課題の基課題で得られた夫婦財産法に関する知見と相似的である。制度間比較の視点は、成果のとりまとめに資する。日本法の発信については、2018年相続法改正に関する仏語論文を公表するとともに、複数の報告を行った。 《課題② 慈善目的贈与における団体の機能》については、公益法人への贈与・遺贈に関する諸規律を精査した。特に、2019年12月に公表された遺留分制度の現状に関する報告書が決定的に重要である。ワーキング・グループの立ち上げが「慈善目的贈与の拡大のために遺留分を廃止すべき」との主張に応えるものであったためである。共同研究者の一人であるゴドゥメ教授は同WGのメンバーであったところ、議論状況につき逐次情報提供を受けた。また、同WG座長のセシル・ペレス教授とも意見交換を行った。しかし、下に記すとおり、研究活動に支障を来す事象に遭遇したため、面談調査の機会を十分には確保できなかった。状況が許す限りではあるが、次年度に挽回を期す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
課題①については成果公表、調査の実施、いずれの点でも順調に推移している。これに対して課題②については、遅れを認めざるをえない。遺留分をめぐる最新の動向を取り込みその分析に時間を割いたこともあるが、フランスにおける調査を本格化しようとした矢先に、年金改革に反対するストライキ、新型ウイルスの感染拡大と、異常とも形容しうる事態に立て続けに見舞われたことが大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題による在外研究期間の上限にはなお達していないため、情勢を見極めつつ、年度中の早い時期に再渡仏を計画し、課題②に関する遅れを取り戻したい。それでも欠ける部分については、メールでの調査票のやりとり、ビデオ会議システムを用いての面談調査を試みるものとする。
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