2018 Fiscal Year Research-status Report
ファクター構造を持つ動学パネルデータモデルの共分散構造分析
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17KK0070
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
早川 和彦 広島大学, 社会科学研究科, 教授 (00508161)
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Project Period (FY) |
2018 – 2020
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Keywords | 共分散構造分析 / パネルデータ / 最尤推定量 / 最小距離推定量 / 動学的パネルデータモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、共分散構造分析を用いた動学的パネルデータモデルの推定について考察した。本研究で考察しているモデルは、非常に一般的な線形パネルデータモデルであり、ラグ付き内生変数・時変説明変数・時間不変な説明変数・ファクター構造を持つ誤差項を許している。また、時変説明変数は、厳密な外生変数・弱外生性変数・内生変数のいずれでも良い。このモデルは、先行研究で考察されている、既存の多くの線形パネルデータモデルを特殊ケースとして含んでいるが、そのような一般的な形のモデル自体を考察した先行研究はない。 今年度はそのような一般的なモデルに対する最尤推定量と最小距離推定量を提案し、統計的な性質を考察した。理論的な分析の結果、時変説明変数が内生変数の場合、正則条件の中で、ランク条件を満たさないことが分かった。そして、その問題を解決する簡単な方法を提案した。 理論的考察を簡単にするために、新しいvechオペレータを提案した。この新しいvechオペレータを使うことで、上記のランク条件の問題が理論的に扱いやすい形で定式化でき、また、局外パラメータをconcentration outした最小距離推定量を導出することができた。今回提案する推定量はパラメータ数が非常に多くなるため、局外パラメータのconcentration outは特に重要であり、実際、モンテカルロ実験から、concentration outをする/しないで、計算時間に著しい差があることが分かった。 モンテカルロ実験の結果から、concentration outした最小距離推定量は優れたパフォーマンスを持ち、既存のGMM推定量よりも優れていることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は理論的側面と実験的側面にわけることができる。理論的側面に関しては、当初の想定と反して、ランク条件が満たされないということが判明したが、それを解決する方法の提案もそれほど時間がかからなかった。また、モンテカルロ実験については、まだすべての結果を得ていないが、計算に時間がかかることは、当初からわかっていたため、当初の想定通り進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
理論的な考察は大体終わっているが、モンテカルロ実験はまだ終わっていない。特に、ファクター数を情報量基準で推定する実験に関しては、計算に時間がかかるため、プログラムを改善するなどして、より短時間で実験結果が得られるようにする。すべての実験結果が得られたら、論文の形としてまとめ、査読付き雑誌に投稿予定である。
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