2018 Fiscal Year Research-status Report
Construction and application of quantitative methods for evaluating industrial cluster policies: A network-based approach
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17KK0077
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
河上 哲 近畿大学, 経済学部, 教授 (60402674)
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Project Period (FY) |
2018 – 2019
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Keywords | 産業クラスター / 技術的近接性 / Product space / 経済複雑性 / ネットワーク分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、政策的に支援すべき産業クラスターがどの地域に、どのような産業からなる事業所で構成され、どこまでの地理的な範囲に形成されているのかを実証分析することを目的とする。事業所間の地理的な立地近接性だけでなく、事業所が有する知識・技術のネットワーク構造を踏まえた技術的近接性も考慮して、産業クラスターの構造・範囲を明らかにする。Product spaceの手法(Hidalgo et al. 2007, Science)を応用し、任意の2製品の組合せが同一の事業所で生産される確率に応じて製品間の技術的近接性を指標化する。製品間の近接性ネットワークからなる製品空間を構築することにより、製品空間上をたどる知識スピルオーバーの経路や潜在的なイノベーションの可能性を解明する。 日本の基幹産業であり特徴的な集積形態が見られる自動車産業に焦点を定め、公刊データをもとに主要自動車部品に関する部品サプライヤの製品ポートフォリオを整備したうえで、自動車部品からなる製品空間を、各製品をノードとし、製品間の類似性の程度をリンクの重みとするネットワーク図として可視化して表現した。また、ある製品を生産できるサプライヤがいかに限られ(遍在性の低さ)、その製品がどれだけ多様な製品を生産できる能力を有するサプライヤに生産されるか(多様性の高さ)に関する情報をもとに、当該製品の洗練性(いかに多様でかつ稀少な知識・技術を生産に要するのか)を複雑性指標として計測した。製品空間の中心部には、多様な知識・技術を集約的に利用して開発された製品が位置する一方で、末端部には他製品との生産技術の関連が少なく、知識集約度が小さい製品が分布した。新しく開発された洗練性の大きい製品は、製品空間の中心部に位置する製品と関連して創出されることから、製品空間全体の核・周辺構造が、近年になるにつれてより明確に創発されることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自動車部品の一次(ティア1)サプライヤと自動車メーカーとの部品の納入及び調達関係を記録した公刊データを利用して、主要自動車部品に関する部品サプライヤの製品ポートフォリオに関する時系列データベース(1988~2017年)を整備した。これをもとに、各製品をノードとし、製品間の類似性の程度をリンクの重みとした製品空間を構築し、既存の製品空間からどのような製品が新しく創出され、またその結果として製品空間がどのように変容しているのかについて動態的側面を考慮した分析を行うことができた。さらに、部品サプライヤを納入先自動車メーカー別に分類することにより、系列サプライヤ別の製品空間やその構造変化について、より詳細に分析することも比較的容易に実行可能である。 本年度の研究成果については、韓国・ソウルで開催された2018 Asia-Pacific Productivity Conference、及びアメリカ合衆国・サンアントニオで開催されたNorth American Regional Science Council第65回年次大会において報告を行った。また国際共同研究を実施しているオランダ・ユトレヒト大学の人文地理・空間計画学部で行われた研究セミナーでも報告し、所属研究者らと研究の発展可能性について意見交換を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
自動車部品の製品空間をネットワーク図として可視化することにより、新しい製品が製品空間上にランダムに発生するのではなく、既存の蓄積された知識・技術のもとに、それらが融合して経路依存的に創出されることを探索的手法により検証した。来年度は、新しい製品が創出される確率が、製品空間のネットワーク構造に規定されることを、計量経済学的に検証し、探索的分析の結果と合わせて分析結果をワーキングペーパーとしてまとめ、国際査読誌に投稿する。 さらに、イノベーションの地理的な側面を考慮する分析へ発展させる。技術的に近接にある事業所群からなる産業クラスターがどの地域に、どのような産業からなる事業所で構成され、どこまでの地理的な範囲に形成されているのかを定量的に実証分析する。まず、自動車部品産業に関する公刊データを活用し、主要な自動車部品がどこに立地する事業所で生産されているかを特定する。事業所の住所情報を利用することにより、製品間のネットワークで構成される製品空間が、どの地域に形成されているのかを分析する。考慮する地域の範囲は、各事業所の生産する製品に技術的に近接にある製品群の生産地点が、どれだけの地理的範囲に密度高く分布しているのかを地理情報システム(GIS)を用いて探索しながら設定する。地域に特有の製品空間から、どのような製品が新しく創出され、また製品空間が結果としてどのように変容しているのかについて、地域が有する知識・技術の異質性に着目して検証を行う。今年度利用したデータとは異なる公刊データを用いるため、自動車部品の種類や調査年次など、両データ間の整合性に留意を払いつつ、共同研究者や研究協力者と協働してデータベースの整備を進める予定である。
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Research Products
(4 results)