2020 Fiscal Year Research-status Report
Observational study of turbulent heat and near-inertial internal waves under perennial sea ice in the Arctic Ocean: Assessment of the global warming
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17KK0083
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川口 悠介 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (00554114)
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Project Period (FY) |
2018 – 2021
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Keywords | 北極海 / 地球温暖化 / 海氷減少 / 海洋乱流 / 内部重力波 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度はノルウェイ経由でドイツ船に乗船して北極海中央海域に調査として赴く予定であったが、コロナウィルスの拡大、世界的なパンデミックの影響で海外渡航が困難であった。一方で、参加を予定していた北極海での航海(MOSAiC)は、主にドイツ人の研究者とクルーを中心とした編成で計画を変更しながらも実施された。課題提案者は、共同研究者に依頼することで、本課題で提案していたほぼ全ての観測内容を遂行することができた。具体的には、多年氷と呼ばれる厚い海氷をプラットフォームとした観測での調査を行った。特に、氷脈(リッジ)などの立体構造周辺における熱や運動量の収支を観察する観測を実施した。ここでは、海氷の直下からROV(無人偵察ロボット)を用いて、リッジの形状を詳しくスキャンしながら、氷上に3つのGPSトラッカーを約150mの間隔で配置することで海氷の2次元的な動きを記録した。同時に、海氷に開けた穴を通して、海氷下の流速を多層で計測するADCPと単層の熱の動きを詳細に記録するADVとを、GPSの中央部分に配置した。一部の機器は現場の不具合で想定通りに機能しないものもあったが、概ね計画通りの観測データを収集することができた。この観測から、観測を行った8-9月の時期に、海氷の周期運動(慣性振動)が最大となり、それに合わせて海洋側の境界層にも同じ周期の内部重力波が励起し、下方に伝搬していく様子が捉えられた。また、海洋中の水温・塩分の観測から、海氷運動に際して、現場でどの程度の熱が海氷の融解および成長に使われているかの見積もりも得ることができた。これらの結果は、当初予定していた計画の中心的なタスクでもあり、観測時期や領域は多少計画とは異なるものの、現地調査として貴重な資料を獲得することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実績欄でも記述したように、今年度はMOSAiCプロジェクトの実施年でもあり、当初は北極海の現地に赴いて自分自身で現地調査を行う予定であった。しかしながら、パンデミックの影響を直に受ける形で海外渡航が困難となり、代わりに現地のドイツ人研究者らに我々の観測内容の実施を託すこととなった。結果としては、ほぼ予定通りの観測を実現することができて、そのデータ解析も順調に進めている。特に、リッジ周辺の熱と運動量の出入りと、海氷運動に伴う内部波の伝搬過程、および、乱流による水塊変質といった物理プロセスに迫るに十分な資料を得ることができた。調査から得られたデータは、2021年度のEuropean Geological Unionの国際学会の場でオンライン発表を行い、セッションハイライトとして注目を集める結果が出始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、MOSAiCプロジェクトで得られたデータの解析を中心に研究を進めていく予定である。上記のようにすでに国際学会の場ではその成果を発表したので、今後は査読付きのジャーナルからの出版を目指して、MOSAiCで協力を得た研究者らと論文の構想に取り掛かる予定である。なお、新型コロナの拡散が落ち着き始めた時点で、再度、ドイツ・ノルウェイを訪問し、観測内容のフォローアップを行いたいと考えている。
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Research Products
(3 results)