2018 Fiscal Year Research-status Report
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17KK0084
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
増渕 達也 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 助教 (20512148)
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Project Period (FY) |
2018 – 2019
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Keywords | ヒッグス粒子 / 質量起源 / フェルミオン / ガス検出器 / 高抵抗薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は2017年までにLHC-ATLAS実験で取得した約80/fbの積分ルミノシティの13TeV陽子陽子衝突データを解析し、ヒッグス粒子がボトムクォークに崩壊するモードの探索を行った。特に最も感度があるベクターボソンと随伴生成でヒッグス粒子が生成されるチャンネルに焦点を当てた。2016年までの約36/fbのデータ解析ですでに系統誤差が支配的になっており、更に発見感度を向上させるためには一つ一つ系統誤差を精査し、低減する必要があったが見積もり手法を改善することにより低減させることに成功した。 その結果、ベクターボソン随伴生成事象でヒッグス粒子がボトムクォークに崩壊するモードを4.9σの有意度に到達した。また他のチャンネルで生成したヒッグス粒子がボトムクォークに崩壊する事象も統計的に統合することで5.4σの有意度で観測することに成功した。ヒッグス粒子がボトムクォークと相互作用をし、ボトムクォークの質量起源も担っていることを観測した、世界初の発見であり、標準模型のパラメータの一つであるヒッグスとボトムクォークの湯川結合の存在を示した。また観測した信号強度はμ_Hbb = 1.01±0.20であり標準模型と無矛盾であった。この成果はPhysis Letters Bで出版された。また、この成果はベクターボソン随伴生成事象で生成したヒッグスを5.3σで観測したことも含まれており、こちらも世界初の観測となった。更に随伴生成ヒッグス粒子の横運動量の微分断面積を測定し、標準模型と無矛盾であることを確認し、標準模型を超える物理により感度がある高い横運動量(250 GeV以上)の断面積測定も可能であることを示した。この成果はJHEPに投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は2017年までのデータではヒッグス粒子がボトムクォークに崩壊する事象の発見感度が5σに到達しないと見込まれていた。しかし, 解析を見直し系統誤差を低減することが可能になり、ベクターボソン随伴生成事象を用いて4.9シグマの有意度でヒッグス粒子がボトムクォークに崩壊する証拠を掴んだ、また他のチャンネルと統計的に統合する事で5σ以上の有意度でヒッグス粒子とボトムクォークの相互作用を観測した。この相互作用は標準模型のパラメータの一つであり、この発見は素粒子物理学の大きなマイルストーンになった。この成果は更にヒッグス粒子の性質を精密測定するために重要な測定であり、関連したプレスリリースも行い、論文の出版もすることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
5σ以上の有意度で観測することが出来たが、まだ2018年度に取得した陽子陽子衝突データ約60/fbは解析できていない。今後はRun2に取得した全データ約140/fbを用いて更に測定感度を上げていく予定である。特に2018年度の解析結果でヒッグスボソンが高い横運動量を持つ領域の微分断面積の測定が可能であることがわかり、標準模型を超える物理に感度があることが示された。更に高統計のデータを用いて新物理に感度がある領域の微分断面積の精度を上げて標準模型を超える物理を探っていく予定である。また、高い横運動領域ではヒッグス粒子から崩壊したボトムクォーク対が一つのジェットとして観測されてしまうので、より大半径のジェットを用いて事象の再構成などをする必要があり、解析を再構築する。 さらに、μRWell検出器の改良も引き続き行っていく。性能評価をし、最適化したパラメータ条件から高バックグラウンドに強いμRWell検出器の設計・製造を行っていく。
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