2018 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of temporal mechanism based on spatial regulation of cell and creation of new theory of pattern formation
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17KK0094
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
李 聖林 広島大学, 統合生命科学研究科, 准教授 (50620069)
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Project Period (FY) |
2018 – 2020
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Keywords | パターン形成の時空間制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
生命のパターン形成解明は、我々の体が作られる基本原理を明らかにする発生生物学の最も重要な課題の一つである。実験技術の飛躍的発展により、その仕組みの根本には、細胞自らが積極的に関与しながら蛋白質を生成・制御する事が分かってきた。しかし、多くの数理モデルは細胞内外の分子のダイナミクスに細胞の役割を積極に考慮しておらず、細胞の積極的な関わりを示す実験結果を裏付ける事が出来ないでいた。これらを解決するために基課題研究で申請者は、細胞の構造を取り入れた上で、多階層における分子の動態を同時に考察できる新しい多細胞モデリング手法の開発を目指し、細胞の幾何学的性質に基づく空間的制御が細胞の運命を決定する細胞内分子のパターン形成に積極的関与する可能性を突き止めた。この結果から、細胞の空間的制御によって変化する細胞内分子の動態、さらにその分子の動態によって変化し得る細胞の時間的制御には深い関係が存在する可能性が解ってきた。 本年度ではこれらのモデリング手法を非対称細胞分裂における極性形成のメカニズム解明に応用し、細胞分裂における時間的制御と細胞極性の空間的制御がどう関わっているのかについて考察を行った。また、細胞の形を時空間的に変化させながら細胞内の分子の動態が記述できる数理モデルの構築に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞の幾何学的構造をそのまま反映した上で細胞内と細胞間の分子の相互作用を記述できる数理モデルを完成し、細胞間の非対称性を生み出すパターン形成の新しい仕組みとして細胞のサイズと形が深く関わることを発見した後、その根本となるメカニズムを突き止めるためにその数理的構造を理解すべく数理解析を行ってきた。その結果、細胞の幾何学的構造の反映は「空間状態」が分子間の相互作用に影響を及ぼし、その結果、細胞全体の分子のダイナミクスにおける制御に影響を及ぼした可能性が解ってきた。つまり、分子のダイナミクスにおいて分子が置かれている空間の性質を無視してきた従来モデルでは発見できなかった「ドメインの形やスケール」による「分子間の相互作用の制御」、そしてその相互作用によって決まる「パターン形成の制御」が行われたのである。そこで、申請者は細胞が持つ「時間的制御」にこの「空間的制御」が影響を及ぼす可能性を新たに考えるようになった。そこで、細胞のパターン形成と時空間的制御の関連性を明らかにするために、まず一個の細胞内で起きるパターン形成を示す非対称分裂にテーマを絞り、ターゲットとなる現象が実際の細胞で起きうる事を突き止めることに成功した。今後その可能性を確実にするために、細胞分裂を取り入れた数理モデルを構築していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
Phase-field法を用いて細胞の分裂を再現するモデル化を実施する。このモデル化をベースに反応拡散系をPhase-field法と組み合わせることで、細胞分裂を伴いながら分子のダイナミクスを記述できるモデル化を実現する。8月にOxfordに行く前にその手法の構築を目指す。Oxford大学に行ってからは、本格的に非対称分裂の時空間的パターン形成の制御についてEamonn Gaffney氏と議論を進めながら研究を進めていく。 今年度の一年はモデリング手法の実現と、今まで見ることの難しかった非対称分裂の極性形成のダイナミクスを時空間全体的に再現するパラメータの特定やテストシミュレーションを行い、数理モデルを用いた現象の基礎再現を目指す。
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