2022 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of temporal mechanism based on spatial regulation of cell and creation of new theory of pattern formation
Project/Area Number |
17KK0094
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
李 聖林 京都大学, 高等研究院, 教授 (50620069)
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Project Period (FY) |
2018 – 2022
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Keywords | パターン形成 / 細胞極性形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
非対称細胞分裂は初期発生段階で細胞の多様性を作り出す極めて重要な仕組みの一つである。そして非対称細胞分裂の根本となるプロセスの一つが細胞極性であ る。線虫の初期胚の母細胞は自分の持つ様々な物質を左右非対称に分布させ、二つの娘細胞にそれぞれ異なる物質を分配することで異なった機能を持つ二つの娘 細胞を作り出す。その際、細胞膜で形成されるPAR極性は非対称分裂のプロセス全体において極めて重要な役割を果たす。 PAR極性プロセスは極性パターンが形成されるフェーズ(Establishment Phase)と極性パターンが維持されるフェーズ(Maintenance Phase)として大きく2つ に分けられる。Establihsment phaseにつ いては今まで多く研究されてきたが、極性パターンが維持されるMaintenance Phaseにおいてはその仕組みについて明確 な答えがなく、長い間謎に残されてい た。そこでイギリスのOxford大学のE. Gaffney氏とアメリカのOhio State 大学のA. Dawes氏と協働し、PAR極性の維持に DCD-42が極めて重要に関わっていることを突き止めることに成功した。 そのほか、細胞質で極性を形成するMex-5/6タンパク質の極性形成の仕組み及びMEX-5/6が細胞膜のPAR極性形成に与える影響についても数理モデルを構築し、研 究を行った。本研究は、細胞質タンパク質が細胞膜タンパク質の極性の制御に大きな影響を及ぼす可能性を突き止めただけではなく、細胞の形と細胞質タンパク 質が協働し、細胞膜PAR極性に重大な影響を及ぼす可能性について世界で初めて提案した。本研究成果は、国際専門誌 Bulletin of Mathematical Biologyに出版された。 さらに、2Dの細胞膜と3D細胞質という二つの空間構造(細胞組織の空間構造)がパターン形成に与える影響について数学的考察を行い、二つの階層の相互作用がパターン形成に重要な影響を与えることを数学解析に明らかにした。
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