2018 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of microstructural changes on DLC films by heating to improve heat resistance
Project/Area Number |
17KK0111
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
赤坂 大樹 東京工業大学, 工学院, 准教授 (80500983)
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Project Period (FY) |
2018 – 2020
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Keywords | DLC膜 / 炭素 / PEEM / NEXAFS / sp2結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダイヤモンド状炭素(Diamond-Like Carbon: DLC)膜の構造(水素量・sp2/sp3結合炭素比)と膜の耐熱性の関係を熱分解反応メカニズムの解明により明らかとし,耐熱構造マッピングを作成する研究を更に発展させ,局所構造における熱分解過程をタイの放射光施設Synchrotron Light Research Institute (SLRI)との国際共同研究により明らかとすることを目的とし,SLRIの放射光ラインに設置されている高分解能エックス線吸収微細構造(NEXAFS)に光電子顕微鏡(PEEM)を併設した装置を用いてDLC膜内のCk端付近のエネルギーのX線の炭素による吸収の2次元分布像を加熱しながらPEEMにより逐次得ることで,炭素の熱分解過程を把握するための研究を実施した.本年度はDLC膜の熱によるsp2/sp3結合炭素の局所変化と熱分解により生じる脱離ガスの分析を比較し,膜の分解過程が“局所的に進むか”に着目し,研究を進めた.DLC膜として非水素化DLC膜及び水素を含むDLC膜など製造手法及び原料を変える事で構造の異なる5種類を準備し,これらを1000℃まで加熱を行い,その際の脱離ガス成分の分析を行なうと同時に本研究ではPEEM像を得た.加熱前のDLC膜中においてsp2/sp3結合炭素比の偏析が無い均一な構造を有することを確認した.これらを加熱しながら特にsp2結合炭素が吸収する285 eV付近のX線を入射させた際のPEEM像において,膜の加熱によるサブマイクロオーダの局所的な縞状模様や濃淡は確認できなかった.よって,構造の変化はsp2結合炭素が局所的に現れるのではなく,全体として比較的均一にsp2/sp3結合炭素比が変化していくことが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では効率的に研究を進めるため,SLRIの放射光ラインに設置されている高分解能エックス線吸収微細構造(NEXAFS)に光電子顕微鏡(PEEM)を併設した装置を用いての評価をタイで,渡航者が途中帰国し,DLC膜の合成およびその他の評価を東京工業大学で行うことで非常に効率的に実施してきている. DLC膜内の炭素のCk端付近のエネルギーのX線の炭素による吸収を入射X線のエネルギーを分光・変化させながら,NEXAFSスペクトルを得ると同時に同過程で放出される電子の分布をPEEMにより観測する事でX線吸収量の2次元分布像を得てきた.この時,DLC膜を加熱しながら,像を得る,炭素の熱分解過程を把握するための研究を実施した.本年度は炭素のsp2およびsp3結合のサブミクロンの局所変化・偏析が加熱による分解過程で現れるかに注目し,研究を進めた. 東工大でDLC膜として非水素化DLC膜及び水素を含むDLC膜など製造手法及び原料を変える事で構造の異なる5種類を準備し,これらを真空保持したまま,タイに搬送し,超高真空内で1000℃まで加熱を行い,その際のPEEM像を得た.加熱前のDLC膜中においてsp2/sp3結合炭素比に偏析が無い均一な構造であった.これらを加熱しながら特にsp2結合炭素が吸収する285 eV付近のX線を入射させた際のPEEM像において,膜の加熱によるサブマイクロオーダの局所的なsp2結合性炭素の偏析に起因する縞状模様や濃淡は確認できなかった.よって,構造の変化はsp2結合炭素が局所的に現れるのではなく,全体として比較的均一にsp2/sp3結合炭素比が変化していくことが示された. 一方で,均一でない構造を有する場合について,局所的に加熱による構造変化が進むことが示唆されており,これを2019年度の研究では把握することを実施予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の結果良好な結果を受け,研究体制は同じく,エックス線吸収微細構造(NEXAFS)に光電子顕微鏡(PEEM)を併設した装置を用いたsp2/sp3結合炭素比の分布の評価をSynchrotron Light Research Institute (SLRI)で,ビームの停止期間などで研究者が途中帰国し,DLC膜の合成およびその他の評価を東京工業大学で行う. 2019年度の方針はもう一段高分解能なPEEM観測モードを使用し,数ナノメータでの局所分解が起きる可能性を探索する.又,ドロップレット付近などでは他の部位と異なる炭素の結合状態が考えられることから,加熱前のDLC膜の均一でない構造を有する場合について,局所的に加熱による構造変化が進むかについて実験・研究を実施する.本項目については先に述べたドロップレットおよび局所的な熱や機械的な局所破壊などのダメージを印加し,これら局所的な構造の違いが如何に加熱によって変化していくかを把握する. これらの研究により,本質的なDLC膜の熱分解の学理を得る事ができると共に,実際の使用条件により発生すると考えられる局所的な熱による破壊を明らかとでき,効果的な耐熱性向上できると予想している.
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