2020 Fiscal Year Research-status Report
Design of hybrid particles with solid catalyst and enzyme for cascade catalytic reactions
Project/Area Number |
17KK0124
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
石井 治之 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授(テニュアトラック) (80565820)
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Project Period (FY) |
2018 – 2021
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Keywords | 金ナノ粒子 / 固体触媒 / グリーンケミストリー / 酵素 / カスケード反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
固体触媒や酵素は、工業プロセスにおける有機合成や材料合成に欠かせない触媒である。固体触媒の分野では、固体触媒をナノサイズ化した触媒を開発する研究が広く行われている。これらは優れた触媒能に加え、繰り返し利用できるのが特徴である。これに対し酵素は、ごく微量でも分子特異的で高効率な反応を可能とする。しかしながら、酵素自体が高価であること、安定に運転できる反応条件が限られていること、また一度失活すると再生が困難であること、など、改良すべき課題も多い。 本研究では酵素および触媒ナノ粒子を利用した新たな触媒反応プロセスの開発を目指す。例えば、温和な条件で新たな材料創成となる反応プロセスの構築や酵素や固体触媒を複数組み合わせた逐次反応(カスケード反応)の実現を目的に研究を行う。 2020年度は、これまでに引き続き、液相での酸化反応における金ナノ粒子の触媒能を評価した。酵素反応で用いる基質と同じ化学物質の酸化反応を評価したところ、反応に適したpHが酵素とは異なった。また、金ナノ粒子合成時に残存している微量の金イオンや添加物がこの酸化反応に対して強く影響を与えることを明らかにした。これらの成果を、新たな触媒試験の迅速評価方法として学会で発表した。また、触媒能制御を目的とした金ナノ粒子の構造制御や、金ナノ粒子とは異なるナノ粒子触媒の分散性・安定性向上のための検討を行った。金ナノ粒子の構造制御では、球状の他に非球状の粒子の合成に成功した。ナノ粒子触媒では、熱処理をしてもナノサイズを保つナノ粒子担持触媒合成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
金ナノ粒子の触媒能について、反応条件を詳細に検討することで、比較対象の酵素と大きな違いがあることがわかった。限られた条件であれば金ナノ粒子が酵素と類似した触媒能を示すことがわかった。これは金ナノ粒子をはじめとするナノ粒子触媒を酵素の代替として用いる場合の設計指針となりえる。また、本研究の目的である逐次反応(カスケード反応)実現のための必要な知見を十分に得られたと考えている。新型コロナウイルス流行の影響で、共同研究先での実験やディスカッションは実施できなかったが、研究の進捗状況は随時オンラインで共有した。そのため、論文投稿や今後の研究の準備については順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで本プロジェクトで得られてきた知見より、金ナノ粒子の触媒能と比較対象の酵素(ペルオキシダーゼ)の触媒能について、最適反応条件(pH・温度など)の観点から比較する。特にpHや反応性に大きな違いがでることが明らかとなっているため、添加剤の影響を含め、金ナノ粒子を用いて酵素と同レベルの触媒能が得られるか否かについて検討する。 上記の研究を踏まえ、金ナノ粒子と酵素共存下での触媒試験を行う。この2種の触媒による逐次反応が良好に進行する条件を検討する。逐次反応の検討とは別に、ナノ粒子触媒と酵素の共存によって、触媒能が向上する条件を明らかにする。
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