2019 Fiscal Year Research-status Report
Understanding the growth mechanism of boron carbon nitride films based on the ion transportation behavior in HiPIMS deischarge
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17KK0136
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
清水 徹英 首都大学東京, システムデザイン学部, 助教 (70614543)
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Project Period (FY) |
2018 – 2020
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Keywords | HiPIMS / 炭化窒化ホウ素 / イオン質量分析 / エミッシブプローブ / グリッドレスプローブ / イオンエネルギー / プラズマ電位 / イオン化率 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、スパッタ粒子の高いイオン化率を特徴とするHiPIMSプロセスによる優れた実耐久性を有する超高靱性炭窒化ホウ素(BCN)膜の創製を目指し、HiPIMSプラズマにおけるイオン輸送挙動とBCN膜成長メカニズムの相関性を学術的に解明していくものである。その実現に向け、HiPIMS研究を牽引してきたLinkoping大学IFM研究科Plasma and Coatings Physics研究グループの下で、イオン輸送挙動を対象としたプラズマ分析に基づいて、BCN膜成長におけるそれらの役割を解明していくことを研究の全体目標とした。 これに対し第2年度は、各種HiPIMSパルスタイプおよび磁場条件下におけるプラズマ分析によりイオン輸送挙動を明らかにする事を大きな目的として、計10か月の共同研究機関における滞在を経て、①エミッシブプローブを用いたプラズマ電位の空間分布とその時間的推移の検証、②グリッドレスプローブを用いたイオン化率の同定、③イオン質量分析計によるイオンエネルギー分布およびイオン流束の時間推移の分析を実施した。 ①では、2次元的なプラズマ電位の空間分布を時間分解レベルで測定可能なシステムを構築し、各種パルス条件下におけるプラズマ電位の空間分布とパルス電圧のスイッチングに伴う同分布の時間推移の変化を明らかにした。 ②では、昨年度のグリッドプローブによる検証での課題を踏まえ、水晶振動子に直接電圧を印加するグリッド“レス”プローブを新たに導入し、各種パルス条件下におけるイオン化率の傾向を明らかにした。③ではこれまで限られていた検証条件をさらに拡大するため、プロセス圧力・パルス幅・ピーク電流密度等が各種イオンフラックスに及ぼす影響を幅広く検証し、その傾向を明らかにした。以上を踏まえ、最終年度に実施する成膜実験におけるプロセス設計指針の足掛かりとなる基礎データが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体の研究目標に対し、第2年度当初は、①グリッドプローブの設計・製作と磁場可変システムの環境整備、②エネルギアナライザ付質量分析による各種パルスタイプおよび磁場条件下でのイオン輸送挙動の解析、の2点について計画をしていた. これに対し、①に関しては、グリッド電極のコンタミネーションに伴う性能低下に対する解決策として、関連機関の協力を得た上で、水晶振動子に直接電圧を印加するグリッドレスプローブを新たに導入し、基板位置における全粒子流束と中性粒子流束の切り分けを実現した。これにより、各種パルス条件下におけるイオン化率の測定が実現された。当初予定していた電磁コイルによる磁場可変システムの導入は、磁場の時間応答性に課題が生じたため、その代替案として永久磁石の設置位置により磁場を可変するシステムを導入し、以下②において磁場の影響を検証が可能な環境を整備した。 ②に関しては、当初予定していたエネルギアナライザ付質量分析によるプラズマ分析だけでなく、エミッシブプローブの導入によるプラズマ電位の空間分布およびその時間推移の検証が実現された。これによってターゲット近傍から基板間におけるイオン輸送過程に関連する電子フラックスの空間的・時間的推移の変化と各種パルス条件が及ぼす影響が解明され期待以上の成果が得られた。イオン質量分析計による測定では、これまで限られていた検証条件を拡大する事で、パルス幅やピーク電流密度により基板位置に入射するイオン種の構成比率や各種イオンエネルギー分布が大きく変化することが明らかにされた。 以上のように、これまで国内では実施が困難であったプラズマ分析ツールを駆使する事で数多くの知見が得られ、最終年度の成膜実験に向けた準備が進められた。このように本事業当初の計画に対しておおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、上記の通り共同研究機関への渡航期間中に明らかにされたHiPIMSパルス条件や磁場構成によるプラズマ特性の変化を足掛かりとして、国内所属機関における成膜実験を実施していく。特に各イオン種の構成比率やエネルギー分布をはじめとした入射粒子の関連因子の系統的な検証を実施し、BCN膜の結晶相(六方晶/立方晶)や結合状態(sp2/sp3混成軌道)の変態挙動に着眼し、上記因子が及ぼす影響の解明に取り組んでいく。 上記に関わるパラメータとして、これまでのBCN薄膜成長に関する先行研究で多く議論されてきた「一蒸着粒子当たりの移行運動量」について検討を進めていく。基板に入射するイオン種(B、C、N、N2およびArイオン)の原子質量の差異に着目し、その構成比率によって平均移行運動量の制御を実現し、BCN膜の変態挙動に関して検証を進める。 さらなる検討項目として、B, NおよびN2イオンの個々の役割についても検討予定である。その実現のため、これまでのプラズマ分析結果に基づいてそのパルス条件のプロセス設計を検討し、基板バイアス電圧の遅延印加技術を活用した各イオン種の選択的なイオンエネルギーの加速を実現し、イオン種およびイオンエネルギーがBCN膜の変態挙動に及ぼす影響を検証していく。得られた膜の組成・結晶構造・結合状態を定量的に評価した上で、各種イオンの寄与率や入射エネルギーによるマッピング化を試みる。これにより、BCN 膜の結晶相・結合状態に及ぼす影響を体系的にまとめていくことで、本国際共同研究事業の総括を行っていく。ここで得られた研究成果は、随時積極的に特許、論文、口頭発表等により周知を図る。
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Research Products
(4 results)