2019 Fiscal Year Research-status Report
鳥類精子における膜ラフトマイクロドメインを介した先体反応制御機構の解明
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17KK0150
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
浅野 敦之 筑波大学, 生命環境系, 助教 (10630981)
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Project Period (FY) |
2018 – 2020
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Keywords | シグナル伝達 / 細胞膜 / 精子 / 受精 / 先体反応 / 鳥類 / グルコース / プロテオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
鳥類精子において細胞膜シグナル伝達経路を介した先体反応分子メカニズムの解明に取り組み、進行状況は以下の通りである。 1. SRCファミリーキナーゼ(SFK)の鷄精子先体反応における機能的役割を調べた。その結果SFKは精子頭部に存在し、膜ラフトにより活性制御されていることが分かった。さらに種々の特異的阻害剤を使った実験で、SFKは細胞膜ポテンシャルを制御することで異常な先体反応を抑制している事が分かった。本成果は国際学会誌へ投稿中である。 2.卵膜-精子相互作用におけるカルシウムの役割を調べた。その結果、精子は卵膜結合により、細胞内カルシウム増加、および運動パターン変化を引き起こすことで、卵膜への侵入能力を獲得する事が分かった。本成果は2020年秋の国内学会で発表予定である。 3.鷄精子から特異的に分離した先体部分の網羅的プロテオミクス解析を行った。さらに同定された分子群から機能性の高いタンパク質を絞り出し、抗体を作成した。免疫検出の結果、ほぼ全ての抗体が鷄先体に特異的に存在することが分かり、プロテオミクスデータの正当性が裏付けられた。 4. 前年の取り組みで先体反応性がグルコース代謝シグナルで制御されることが分かった。そこで、グルコース代謝カスケードと鞭毛運動の関係性を調べた。その結果、鷄精子はグルコース輸送体GLUT1を介してグルコースを取り込むことで運動性を向上する。またGLUT1は鞭毛中片部に存在するミトコンドリア鞘に特異的に存在し、解糖系と酸化適リン酸化に寄与することでATP産生に関わっていることが分かった。得られた成果はReproduction, fertility and Developmentに掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年夏に数ヶ月間米国コーネル大学に滞在し、生細胞カルシウムイメージングおよび卵膜組換えタンパク作成を実施する予定だったが、学務が入り渡米できなかった。そのため、1細胞レベルのイメージング分析からスペクトロフォトメトリーに手技を変更し、卵膜侵入における精子カルシウムの役割を集団レベルで調べた。その結果、細胞外カルシウムの流入は精子において特定機能に変化を引き起こすことが分かったことは嬉しい誤算だった。コロナ禍が落ち着いた時点で、再度渡米による共同実験の実施を検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 抗体および阻害剤を用いて、プロテオーム解析で判明した受精機能関連分子群の特性化を進める。 2.卵膜構成分子の組換えタンパク作成を進める。 3..精子における主要ATP生産経路の同定とその卵膜侵入における役割を明らかにする。 4.コーネル大学において、高解像度共焦点レーザー顕微鏡による1細胞カルシウムイメージングを実施し、卵膜-精子相互作用によるカルシウム流入の責任チャンネルを明らかにする。
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