2022 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of Brain Molecular Mechanisms of Drug Addiction and Empathic Behavior Altered by Juvenile Stress
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17KK0161
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
吉田 隆行 広島大学, 医系科学研究科(医), 准教授 (60374229)
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Project Period (FY) |
2017 – 2022
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Keywords | 観察恐怖学習 / 内側前頭前皮質 |
Outline of Annual Research Achievements |
不安障害や気分障害は脳内のセロトニンなどのモノアミン系神経伝達物質の低下が原因とする仮説が提唱されているが、第一選択薬である選択的セロトニン再取り込み阻害剤などの抗うつ薬に反応しない患者が一定数存在する。このため、これらの精神疾患の生後発達過程に応じたメカニズム解明が必要である。本研究では、思春期のストレスが神経精神基盤の成熟に与える影響について、分子・神経回路・行動メカニズムを見出すことを目的とし、情動機能調節に重要な脳部位である内側前頭前皮質における神経回路メカニズムを電気生理学的、神経化学的ならびに行動学的に検討した。 ヒトの思春期初期に相当する生後3-4週齢時(幼若期)に足蹠電撃による恐怖ストレスを受けたマウス(幼若期ストレスマウス)は成熟期において、不安環境下における運動量が減少していた。また、共感性の評価系として、他個体の恐怖反応に対する自身の情動反応の評価である観察恐怖学習試験を実施した結果、負の共感性と解釈できるすくみ行動が亢進していた。さらに、恐怖を受けた他個体に対する社会的行動であるにおい嗅ぎ行動が減少していた。この幼若期ストレスマウスの神経細胞(錐体細胞)の活動電位の発生頻度が扁桃体と前帯状皮質で亢進しており、扁桃体でのセロトニン受容体の感受性の低下を示すデータを得た。 共感様行動である観察恐怖学習に関わる分子・神経回路・行動機能について、内側前頭前皮質背側部(dmPFC)からの神経投射は扁桃体基底外側核(BLA)、中脳水道周囲灰白質外側部/背外側部(l/vlPAG)、前障(CLA)、無顆粒島皮質(AI)に多かったことから、今年度はBLAならびにl/vlPAGに投射するdmPFC神経細胞のうち、観察恐怖学習によって活性化する神経細胞の割合を検討した。
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