2018 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the mechanism of arrhythmia in myocardial infarction in an organ-on-a-chip
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17KK0168
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
高橋 賢 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (50432258)
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Project Period (FY) |
2018 – 2020
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Keywords | 臓器チップ / 心筋梗塞 / 腎移植 / 虚血再灌流障害 / 補体活性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は2018年7月末より米国に渡航し、ハーバード大学Wyss Instituteにて研究を開始した。本研究の中間目標である臓器チップによる心臓虚血再灌流障害モデルの作成に先立ち、腎臓虚血再灌流障害モデルの作成に着手した。心臓虚血再灌流障害は心筋梗塞の、腎臓虚血再灌流障害は腎移植時の臓器障害の病態に関与しており、医学的意義は大きい。 シリコン樹脂(polydimethylsiloxane)製の2チャンネル臓器チップ上にヒト腎臓血管内皮細胞およびヒト腎臓近位尿細管上皮細胞を共培養し(腎臓チップ)、この培養系に過酸化水素投与を行うことにより虚血再灌流障害の模擬状態モデルを作成した。このモデルにおいて核染色および傷害細胞を検出するpropidium iodide染色を行い、蛍光顕微鏡像を撮像し細胞傷害をイメージングにより定量的に測定する実験系を確立した。また、虚血再灌流障害のモデルとして過酸化水素投与に加え、低酸素/再酸素化処理および塩化コバルト投与法の評価を行なった。低酸素刺激が有効に与えられているかを確認する方法として、低酸素誘導因子1α (HIF1α)のELISA検出を行なった。 さらに虚血再灌流障害のメカニズムとして補体活性化のレクチン経路に着目した。補体活性化のレクチン経路では、傷害細胞にマンノース結合レクチン(MBL)とC4d補体が沈着することが知られている。これを確認するため、腎臓チップに過酸化水素を投与し、MBLとC4dの免疫染色を行なった。なお補体活性化には血漿成分が不可欠であるため、腎臓チップ上でヒト血漿および全血の灌流を行なった。その結果、過酸化水素の濃度増加に伴いMBLとC4dの沈着が増加する傾向が腎臓近位尿細管上皮細胞において見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 臓器チップ実験を行うためのPDMS表面の活性化処理、足場タンパク質による表面処理、細胞培養法、培地・血液灌流法、低酸素負荷法、顕微鏡イメージング法を習得した。これらの方法は心臓細胞を用いることで容易に心臓虚血再灌流障害チップモデルに応用することができる。 2. 本研究の目的は、ヒト心筋細胞おけるTRPM4チャネルの不整脈寄与の解明である。日本では研究協力者らがラット心筋細胞株H9c2を用いた研究を継続しており、一過性受容器電位チャネルサブタイプM4(TRPM4チャネル)をCRISPRノックアウトした系での実験方法を確立した。ヒトiPS心筋細胞のTRPM4チャネルのCRISPRノックアウトを行うための準備は整っており、目的に対し順調に研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 血液脳関門(BBB)チップ ヒトiPS細胞を分化誘導した臓器チップの取り扱い方法を習得するため、BBBチップの実験方法を習得する。BBBチップは神経細胞、星状細胞、脳血管内皮細胞および周皮細胞の共培養系である。この実験系を虚血再灌流障害の模擬状態に曝露する。これは脳梗塞のモデルとなり医学的意義が大きい。 これまで研究代表者は心筋細胞のみを用いた実験系で研究を行ってきたが、虚血再灌流障害では血管内皮細胞の影響が大きいと考えられており、また心筋細胞は心臓線維芽細胞と機能的連携があることが知られている。したがってBBBチップにおける共培養系の習得は、心筋細胞、心臓線維芽細胞および血管内皮細胞の共培養により心臓チップをより生体の心臓に近づける点で大いに有効である。 2. ヒトiPS細胞のTRPM4チャネルのCRISPRノックアウト 研究代表者らはラット心筋細胞株H9c2細胞のTRPM4チャネルのCRISPRノックアウトに成功しており、かつヒトiPS細胞の心筋細胞への分化誘導をルーチンで行なっている。今年度はヒトiPS細胞のTRPM4チャネルのCRISPRノックアウトを行い、ヒトの心臓虚血再灌流障害におけるTRPM4チャネルの関与を調べる。
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Research Products
(7 results)